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愛着障害と心理的安全基地

 臨界期と安全基地。
 愛着障害の本を読んでから気になっている用語です。
 愛着障害を理解する上で重要と感じました。
 今回はこの二つの用語について考えたことを話します。

1 臨界期

 臨界期は,生物の発達の過程においての一時期を指します。
 その時期に,ある刺激を受けることで大いに発達が促進される。
 そういう時期です。
 逆にいうと,この時期以外にその刺激をたっぷり受けても,あまり発達は促進されない。
 そういう時期のことです。
 元々は,植物の生長における日照の研究から始まったとのことでした。
 植物は,ある時期に日光を十分に浴びないと健全な生長をしない。
 こういうことが分かったのだそうです。
 それを動物にあてはめたのは,ローレンツ博士です,
 「ソロモンの指輪」での有名な事例,ガンのひなの話です。
 生まれて初めて見たアヒルを親と認識して,アヒルの後について歩いたという事例です。
 動物行動学では「刻印付け」と訳されていますが心理学では「刷り込み」と訳されています。
 英語では inprinting ですね。
 ローレンツ博士はオーストリアなので,言語はドイツ語だと思いますが。

2 愛着障害における臨界期

 愛着障害における臨界期は6か月から1歳半ということでした。
 この時期に,特に母親と十分な愛着形成をしないと,情緒上の問題を抱える。
 こういうことだそうです。
 安心感を与えるスキンシップや言葉掛けなどが具体的な行動にあたるそうです。
 父親は代わりにならないのかなあとか考えていますが,母親は母乳を与えたりしますからね。
 まあ,もしかすると特定の人物が愛情をたっぷり注げばいいのかもしれません。
 先に紹介した岡田尊司さんの「愛着障害」には,文学者の例が多数出ていました。
 それによるとものごころついてからの愛着のなさも影響しているように述べられていましたから,もしかすると臨界期はもう少し長いのかもしれません。
 しかし,6か月から1歳半に愛着形成がなされないというのは,ずいぶん悲劇的なことのように感じます。
 でも,児童虐待のニュースとかを聞くと,こういうこともあるのかなあと思います。
 悲しいことですが。
 今後の調査によると思うのですが,核家族に臨界期を逃すことが多いような気がします。
 そんなことないと叱られそうですけど。
 最近,発達障害が増えているとのことですが,もしかすると愛着障害なのかもしれませんね。
 核家族が増えても,一人働き一人家庭の時は少なかったように思います。
 不景気になって,核家族で共働きが増えるのとともに増えたような気がします。
 まあ感想です。
 統計的に誰か検証していただけないでしょうか。
 気になります。
 さて,愛着障害で臨界期を逃すと次のような傾向になるそうです。

3 安全基地の喪失

 安心基地と表現されている方もいます。
 心理的に安全と考えられる場所です。
 「母親」のふところに戻ると安心する。
 それをこのように表現しているようです。
 成長してから。母親を頼ってばかりではマザコンといわれます。
 まあそれは冗談で,そういうものとは異なる情緒的な混乱ですね。
 共感性に乏しかったり,怒りっぽかったりとそんな感じです。
 頼りないとは別ですね。
 この心理的な安全基地がないことで,絶えず不安感や孤独感,寂寥感などを感じている。
 そういう状態におかれるのだそうです。
 何か自己認識を伴わない人間不信のような感じです。
 確かに,このような状態であれば,適切な人間関係をつくることは難しそうです。

4 どうすればよいか

 対応はそれぞれその人に合わせてということです。
 しかし,有効な方法として愛着形成の追体験があるとのこと。
 つまり,幼児期の愛着形成をもう一度やり直してみる。
 親役の方がその役割担う。
 ある方は,幼児雑誌を幼い順から読み直していたとか。
 そういう方法も有効に働く場合があるそうです。
 いずれにしろ,心理的な安全基地を形成することが大事です。
 しかし,新たに形成するのは代理的な安全基地です。
 ここに難しさがあるように思います。
 愛着障害については「ほんとうにあるのか」も含めて,一層の研究が必要でしょう。
 今後も勉強していきたいと思います。

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