「勇気づけの心理学」という本を読みました。
タイトルに惹かれて読み始めたのですが,なんとアドラ-心理学でした。
どうも目につく本がアドラーに関係あるようです。
今回は,この本を読んで考えたことを話します。
1 勇気くだき
もっとも印象に残った言葉がこの「勇気くだき」でした。
勇気づけの反対語です。
相手の勇気をくじく言葉です。
7つのパターンがあるとのこと。
① 減点主義
② ダメ出し
③ 結果重視(プロセス軽視)
④ 競争原理(対他競争)
⑤ 人格軽視
⑥ 聴き下手
⑦ 失敗を非難
なるほど。
どれも相手の勇気というかやる気をなくすものです。
まあ,昔の根性論でしたら「なにくそ」とか「なんのこれしき」なんでしょうけど,そういう反応は期待できないでしょう。
そういう反応するくらいの人には,勇気づけが必要ないでしょうから。
しかし,この7つの項目はよくできていますね。
こういう声掛けを思わずしてしまいます。
特に,配下の立場に対して。
これは気をつけないといけないでしょう。
2 ほめることと勇気づけること
もう一つ気になったところがあります。
ほめないということです。
ほめるのではなく,勇気づけるのだ。
これが大切ということでした。
まさにアドラ-心理学
「幸せになる勇気」を読んだ際,一番気になっていたことでした。
結局,あの本では解決できなかったのでした。
「幸せになる勇気」では,アドラ-心理学に感動し教師になった青年が出てきます。
そして,アドラ-の教えに忠実な実践をします。
つまり「ほめない」「けなさない」です。
そうした結果,まあ学級崩壊になったと。
こういう話でした。
教えと実践の関連についての問題だったので,とても関心をもったのですが,明解な答えは読み取れませんでした。
本では,いい感じに解決した風になってたんですけど。
さて,ここでいう「ほめる」とは,ほめる人の価値基準で相手を判断するということです。
まあ,つまりプラスの評価を与える「ほめる」もマイナスの評価を与える「けなす」もダメ。
それらは,他人の判断だから。
こういうことです。
では「勇気づける」とは,何か。
相手の価値を尊重することらしいです。
例を挙げるとこうなるそうです。
ほめる「今日はすばらしいゴール・キックだった。お父さんは満足だ」
または「ゴール・キックをミスするなんて,お前にはがっかりだよ」
勇気づける「ゴール・キックのことでがっかりしているようだけど,角度とスピードがすごかったよ」
つまり,相手の意図と行為を称賛するのですね。
なるほど。
これなら,ほめたとしても嫌みととられず,受け入れられそうです。
3 性善説ではないのか
しかしながら,若干の疑問が残ります。
相手がそもそも悪意をもって行動していたらどうなのか。
いや,悪意はないにしろ,誤った認識で行動していたらどうなのか。
結局,「勇気づける」ことは,それらの行為を助長するすることにならないか。
こんな風に思いました。
短所や失敗はリフレーミング,つまりとらえ直しをすればよい。
それは分かります。
しかし,短所や失敗ではなく,そもそも行為の意図が不適切であったなら。
う~ん。
そういう場合は,声掛けすらしなければよい。
それも一つの対策でしょう。
でも「幸せになる勇気」のように教師だったらどうでしょう。
無視するわけにはいかなくなります。
どこからしら,認められる部分を勇気づけていくことがいいのでしょうか。
難しいですね。
そもそも「勇気づけ」は,相手への尊敬と共同体意識が必要だといいます。
まあ,尊敬は必要でしょう。
問題は,共同体意識です。
これ難しいのですけど,同じ世界の仲間だという感覚という風に考えました。
であればですよ。
同じ世界の人ではないかもしれない,という場合はどうなるのでしょう。
やっぱりうなってしまいます。
性善説が前提にあるのかな,
そうも思いました。
しかし,アドラーはユダヤ人迫害でアメリカに亡命した人。
ナチスに対してどう思っていたのでしょうか。
とも考えるのです。
まあ,そんなにまで悪意のある人に現実に会うことは少ないでしょうから,実際にはあまり問題にはならないかなあ。
と,楽天的に考えておくことにします。
4 実践的な心理学
少し疑問が残ったのですがこの「勇気づけの心理学」は実践的でよかったです。
ただの how to ものではなかったですし。
後は,これが実践できるかです。
まあ,深呼吸をしながらやっていきたいと思います。
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