1 概要
2014年初版の空き家問題を解説した本です。
著者は三井不動産に長年勤めた不動産の専門家。
なので、空き家がなぜ増えて、なぜ減らないかを実際に即して解説しています。
人口縮小問題の一側面ではあるのですが、これ単独でもかなり大きな問題とわかりました。
2 空き家増加の背景
バブルが崩壊するまでは、マイホームは夢でした。
一国一城の主などとあおられて、ローンを組んで建てた人のなんと多かったことか。
そのマイホームが空き家になる。
どうしてそうなるかというと、こんな感じです。
親と同居していない夫婦が家を買います。
子供が生まれて育てます。
この頃は、子供のうち誰かが家に残ると思っています。
子供が大学進学したり就職したりします。
大学や会社が家から遠いため、アパートを借ります。
子供が結婚をします。
そうすると家に戻ることはありません。
そうして、年老いた夫婦が家に残ります。
やがて夫が寿命となり妻が一人残ります。
そして、妻もお迎えが来て、誰も住まない家が残る。
こういうことらしいのです。
不必要な家ならば売ればいい。
と考えますが、人口減と収入減、そして持ち家へのこだわりのなさから、よほどよい条件じゃないと家は売れないのだそうです。
正に負動産。
では、取り壊せばいいではないか。
これも2つの理由でできないのだとか。
1つは解体費用の高さ。
軽く数百万円もするのだとか。
もう1つは固定資産税。
更地と家では税金がびっくりするくらい違うのだとか。
家だと6分の1くらいだそうです。
お金をかけて壊して、高い税金を払い続ける。
何が悲しくて、こんな茨の道を歩かなくてはいけないのか。
とまあ、そりゃあ空き家のままにしますねって感じです。
3 空き家問題の解決策
では、どうやってこの問題を解決するのか。
簡単にいうと、特効薬はありません。
一番いいのは、景気をよくして家の需要を高めることです。
買う人を増やせば、この問題は解決します。
ぼろぼろになって住めなくなったような家以外は売るのが一番よいからです。
しかし、日本の経済状況、人口状況ではそこは望めません。
次にどうするか。
シェアハウス等に改築して貸し出す。
高齢者施設として再開発する。
減築して耐震対応を高める。
介護施設に転用する。
などのアイデアが本書で提示されています。
アイデアとしてはおもしろいですが、実際は需要との関係で実行するかどうかを考えないといけないでしょうね。
特に郊外の開発宅地だと、交通の便の問題があって貸すのも難しいようですし。
4 総評
持ち家か賃貸か。
人生の問題として取り上げられることが多い話題ですが、本書を読む限り賃貸の方がよさそうですね。
まあ、最後に空き家になったとしても住んでいる間はよかったのだからそうともいえないのかもしれません。
子供にとってはそうではないでしょうけど。
空き家問題の本質は自治体の環境悪化問題ですが、個人にとっては相続の問題です。
つまり、相続したくなく自分のふところからお金を奪っていく負債をどうするか。
こういう問題です。
ということは、親が生きている間に解決すべき問題なのだと思います。
断捨離とか生前整理とか、そういう類いの問題なのでしょう。
家が重荷になる。
そんな時代がほんとうにやってきたんだなあ。
感慨深いです。
追加:本書は以前にもこのブログで取り上げていましたが、そのことをすっかり忘れていました。年月が経ちましたが、家が負動産であるという考えは変わっていませんね。