1 現代的な問題
少子高齢化社会の影響を最も受けているのが地方。
こういう共通認識が国民一般にできているような気がします。
そこで、ふるさと創生とかまちづくりなどが取り上げられるのでしょう。
本書は、高校生の頃からまちづくりに関わってきた、その道の専門家が著した1冊です。
まちづくりの実際と対策が丁寧に述べられています。
印象に残ったこと3つを述べます。
- 人口減は本質じゃない
- 失敗の理由あれこれ
- 「よそ者」活用法
2 人口減は本質じゃない
地方衰退の原因は、人口減少ではない。
そう著者はいい切ります。
人口減少は結果であると。
では、原因は何なのでしょう?
産業の衰退こそがその原因なのだといいます。
若者を惹きつける魅力ある働き場がない。
このことが人口流出を引き起こしているというのです。
ただ、働き場があっても若者が出て行く場合があります。
それは、働き場に魅力がない場合です
こういうところで働きたい若者はいません。
特に女性はそうです。
女性がいなくなると人口減少はさらに進みます。
まずは、若者が働きたいと集まってくるような仕事場。
こういうものをつくるのが大切だと、筆者はいいます。
3 失敗の理由あれこれ
さて、若い頃からまちづくりに関わっている筆者です。
様々な失敗事例を見てきました。
ほんとにいろいろあるのですけれど、大きくまとめて1つめの理由はこれでしょう。
他人事である。
みんなでやろうという美名のもと、誰も責任を取らない。
応援してるということを言いながら、関わろうとしない。
専門家に任せて、自分から動こうとしない。
まあこんなところですが、つまりは本気で成功しようと思っていない感じなのですね。
成功するわけないです。
次は、これです。
後ろ向きである。
昔話ばかりを語り、未来を構想しようとしない。
成功した人をねたむ、足を引っ張る。
マイナス材料ばかりを語る。
前に進む活力がないのでは、進むわけがありません。
その他いろいろ載っているのですが、地方に住むわたしから見ると、どれも
(あ~、そうだよね)
という感じで、よくわかります。
地方に残っている人のマインドってこんな感じです。
活力ある人を活躍させないといけないのですけれど。
4 「よそ者」活用法
というわけで、地方にやってきた「よそ者」を活用しなくてはいけないのです。
ですが、これもいろいろ問題があるようです。
まず、「よそ者」がすばらしいとは限らないこと。
3年間の給料を保障する「地域おこし協力隊員」の制度がつくられました。
よそから地域おこしで入ってくる人を応援する制度です。
しかし、入ってくる人がすべてすばらしいかというとそうでもないようで。
ワーキングホリデー感覚でやってきて、3年いてもお客さんな人もいるとか。
また、総務省が地域おこしの予算をつけてくるので、それを目当てに東京のコンサルが入り込んでくることもあるそうです。
結果、予算がある間は活動しますが、予算がなくなればサヨウナラ。
元の木阿弥です。
よい人を見極めて、その力を引き出すには、受け入れ側の体制が重要です。
要するに、プランがあって、こういう部分で活躍してほしい。
こういう構想があって、「よそ者」を生かすことができるのです。
とにもかくにも、地方の主体性ですね。
それと、地域内と地域外の貿易収支を黒字にできる計画がないと持続しません。
国からの予算だよりでは、持続性がないということです。
チェーン店や大手ショッピングモールをつくっても利益は東京本社です。
大資本の工場ができても、法人税は東京都です。
地域内にお金が流れ込む自立的なシステムが必要なのです。
5 総評
本書は、現場をよく知っている人の本だと思いました。
それゆえ、問題の指摘も対策の提案も(なるほど)と思うところがありました。
ずっと地方に住んでいる者からすると、戦後の日本は外貨が稼げる産業に人材を集中させるシステムを組んでいたのですから、地方の現状はさもありなんといった感じです。
地方からすると、人材収奪システムかずっとフル稼働で動いているのですから。
それを緩和するための地方交付税交付金がありますが、これはあくまで対処療法です。
国の形が変わらない以上、地方の姿が変わるはずがない。
そう思っています。
しかし、本書の最終章のあ12のアクションプランに魅力があるのも事実でした。
その地方に住む人が、本気でやれば変わらないはずがない。
そういう希望が残ります。
幻想や失敗などの語句が目をひきますが、未来や発展を目指した1冊です。
地方再生が気になる方には、必読書だと思いました。