「人のために頑張りすぎて疲れた時に読む本」を読みました。
著者は根本裕幸さん,カウンセラーの方です。
読んで特に印象に残ったこと三つを述べます。
一つ目は,「お察し上手」という言葉です。
これは,他人の気持ちを推察するのが上手な方という意味です。
他人の心情を読み取ることに長けているということは,たいへんな長所だと思います。
しかし,この本では,プラスの意味にとってばかりではありません。
その弊害について多く語られています。
この「お察し」ですが,心理学的には「投影」という現象であるとのことです。
相手の気持ちを自分に投影する,自分の気持ちが相手に投影される。
そうして相手の気持ちが分かる,自分の気持ちを分かってもらうという心の機能だということです。
「お察し」直が高い人は,相手の気持ちが分かる故に,自分の気持ちが相手に伝わるものだと考えがちだそうです。
現実には,そんな都合のよいことは,まれにしか起こりません。
相手は,自分の気持ちを察してはくれないのです。
そこで疲れてしまったり,最悪トラブルが起きたりするというわけです。
他人が自分と同じような人だと思うから,一緒に仕事をしたりイベントを楽しんだりできる。
これは事実です。
運動能力のように,外から見てはっきりわかるものであれば,その力の強弱はとらえやすいでしょう。
しかし,「お察し」力は内面の力,残念ながら見えません。
だから,過大評価をしてしまうことがあるのでしょう。
こういうことは,日常的にあるなあと思います。
二つ目は,「自分軸」という用語です。
「お察し上手」な人は,自分でこうすることが相手のためにいいと思って行動しがちです。
その意図を相手が分かったり,自分の心情も察してくれるようだったら問題は起きません。
そうではないからトラブルにつながるのです。
ここで,筆者が大事な点を指摘していました。
「お察し」力が高い人は,行動の軸を相手に置いているという点です。
相手のためを思って行動している。
その結果がよくない。
だからストレスにつながる。
こういう仕組みになっているというのです。
つまり,他人軸なのに,他人がそう思っていないので,問題が生じるわけです。
これを「自分軸」に変えてみようという提案を筆者はしています。
それは,自分勝手な人になれということではありません。
他人のためにしていたことを自分のためにも使ってみようということ,そういう風に私は取りました。
とても大事な指摘だと思います。
身近な人でも他人です。
心のすべてが分かるわけではありません。
疲れをためないために自分軸を大事にする。
そのことが,結果的に相手にためになると思います。
かえって「重い」といわれることもあるでしょうし。
三つ目は,「愛されている証拠」という用語です。
「愛されている」はちょっと恥ずかしいと私は感じました。
他人から大事にされていると言い換えてもよいでしょう。
どんな小さなことでもよいから,誰かから大事にされている。
そういう事実を見つめて,心に元気を取り戻すというのです。
これは,いいことだなあと思いました。
もしかすると,他人にとっては当たり前の接し方をしていただけかもしれませんが,それをきちんと受け取ることで,自分の心が温かくなる。
ちょっと実践してみようかと思いました。
この本は疲れた方に向けているのか,あっという間に読み終えることができる本です。
でも,内容は価値があり,元気が戻ってくる本です。
人間関係に疲れている方に,お勧めです。