1 本書の概要
海外労働者のルポルタージュです。
本書で扱っている海外出稼ぎは2種類です。
1つは、日本人が海外に出稼ぎに行っているパターン。
2つめは、日本へ外国人が出稼ぎに来ているパターン。
バブル後にはジャパゆきさん。
農村の外国人嫁。
こんなパターンの2つめが多かったのですが、今や安い日本。
1つめが増えているとのことです。
それぞれどんな感じなのか、本書の取材はこうでした。
2 ワーキング・ホリデーで働く日本人
ワーキング・ホリデーとは、こんな制度です。
「ワーキング・ホリデー制度とは、二国・地域間の取決め等に基づき、各々が、相手国・地域の青少年に対し、休暇目的の入国及び滞在期間中における旅行・滞在資金を補うための付随的な就労を認める制度」
外務省のサイトから引用しました。
18~30歳までが対象だそうです。
NHKのルポ班が強調したのは次の2点です。
1 給料が日本よりよい
昨今の円安の影響もあるのでしょうが、通常日本の1.5倍ぐらいです。
いやあ、日本のブラックな労働環境だって給料が高かったら文句はでないでしょうけど。
やはり、給料がよいにこしたことはありません。
2 労働時間が短い
日本は残業とか当たり前にありますから、それがないだけでもずいぶん違います。
日本の長時間労働は、結局のところ、人数不足を時間で補っているだけですからね。
つまり人件費をけちっているだけです。
就業時間後に外国語の勉強をする。
こういうことができるのが普通の労働だと思うのです。
こういう好条件なので、期間延長を希望する人が多いのだとか。
とくに教員だった人がやめてワーキング・ホリデーに参加している人が印象的でした。
日本の教員は、使命感詐欺でしかも改善する気がないですから。
昨今の教員不足も残念ながら当然という気がしてます。
しかし、ワーキング・ホリデーに参加している人の生き生きとしていること。
ほら、解決策はここにあったじゃないですか。
3 技能実習制度
本書は後半、外国人への技能実習制度の話になります。
タイトルは「海外出稼ぎ」なので、日本に来ている人の視点に移したといえばそうなんですが、なんか羊頭狗肉感が出てます。
そこ、興味ある?
ともあれ、技能実習制度とはこんな制度です。
「外国人技能実習制度は、我が国で培われた技能、技術又は知識を開発途上地域等へ移転することによって、当該地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与することを目的として1993年に創設された制度」
JITCOのサイトから引用しました。
もうこれ、上から目線過ぎてどうなんでしょうって感じです。
しかも、最先端の技能が学べる分野ばかりじゃなく、多くは農業等の1次産業に従事させてますし。
また研修だからと給料も安い。
実際には、労働力不足(というか人件費をかけられない)のところに人を派遣しているだけという、ノートリアスな制度なわけですね。
で、やっぱり参加者の不満の声を拾う。
大上段に構えちゃうと、「出稼ぎじゃなくて研修だから、ジャンルちがいでしょ」といえますけど、まあそれも野暮ということで。
この章、あまりに予想どおりで、読むの退屈でした。
4 総評
★★★☆☆
3つですね。
ワーキング・ホリデーのところは読み応えがありました。
ここもっと読みたかったなあ。
若者の、ひいては日本の希望のようで。
技能実習制度のページはいらない。
もうさんざん報道されてるし、制度改正になったけど十分ではないらしいし。
それで最終章に、外国人労働者に選ばれる国に、みたいな記事が載ってたんですけど、これ制度でどうにかなると思ってるのでしょうか。
経済難民は、国が富んでればどんな制度だろうが来ます。
違法とかそういうの関係なく。
だから、選ばれる国にしたいんだったら制度をいじるのじゃなくて、経済をよくすればいいんです。
そして外国人は制度がよくても稼げなければ去ります。
そういうもんですって。
ピントがずれてるんだなあ。
「ワーキング・ホリデー」の事実は、日本の若者の閉塞感解消の問題に関わっていると思うんですよ。
日本に外国人労働者を大勢入れる方法とか、そういう国とか企業レベルの労働確保の問題は今はどうでもいいでしょう。
日本から外国に出る若者が少ないのは、文化的な壁があるのとまだ日本がましな国だからです。
でもですね。
ワーキング・ホリデーの実際なんかももっと知らしめれば変わってくると思います。
ルポルタージュに主張や思想は入るものですが、あんまり強めだと敬遠してしまいますね。