すっかり秋になりました。
見上げると気持ちよい秋の空です。
秋の雲が天高く浮かんでいます。
その光景に昔読んだ小説を思い出しました。
今回は「坂の上の雲」について話します。
1 明治の青春群像
松山出身の秋山好古,真之兄弟と正岡子規の生涯が軸になっています。
長い小説で,様々なエピソードが述べられていますが,軸はこの3人です。
この小説は,後半の3人が功なり名を遂げてからの部分の方が評価が高いように思います。
明治日本の成功を描いた部分として。
しかし,私は明治をどう生きたかという前半の青春群像の方がおもしろかったです。
明治になり身分社会が終わりました。
そして,立身出世が可能な社会となりました。
そこでどう身を立てるかは,手探りだったはずです。
私が象徴的と感じた出来事があります。
それは,秋山兄弟が授業料無料の学校に入ったことです。
そういう道をたどりながら,やがて軍人となるのです。
現代人よりは,国家意識があったとは思いますが,おそらく幕末の志士のように天下国家に対する熱い情熱があったわけではないと思います。
基本は自分の生きる道を探したということなのでしょう。
2 勝利の実像
日露戦争に勝利した。
それが私たちには常識になっています。
当時の資料によると,それは意外な結果なのだそうです。
ですからこの小説も,なぜ勝てたのかということを丁寧に説明します。
日英同盟が機能したから。
バルチック艦隊は遠距離航海をしてきたから。
ロシア宮廷が機能しなかったから。
なるほどと,目からウロコでした。
読めば読むほど,幸運であったことが伝わってきます。
様々な要因かかかわってこの結果になった。
一人か二人の英雄によってもたらされたわけではないと感じました。
3 勝利の後の熱狂
「本日天気晴朗ナレドモ浪高シ」
この電文は,海軍参謀の秋山真之が起草したと伝えられています。
日本海海戦に向かう艦隊からの電文です。
これから決戦に向かう時に打たれました。
海や天候の様子を伝えたと読めるでしょう。
小説中に言及はありませんが,日本海海戦後,この電文に多くの意味が付与されました。
結論をいうと,この電文から日本軍の勝利は確実であるということが読み取れるとのことです。
どうでしょう,読み取れるでしょうか。
解釈はいろいろなところでなされているの省きます。
私は,この解釈は勝利があってはじめて成立するものだ,と思うのです。
また,起草した方がそう述べたわけでもないのです。
秋山眞之は名文家と定評があります。
だとしても,読み過ぎだと思うのです。
熱狂の産物。
私はそう思います。
4 最後に
この小説は,長く様々な要素が入っています。
英雄譚として読むばかりではないように思います。
明治をなんとか生き抜こうとした人たちのお話。
そしてその生き方と国家の発展が奇跡的に一致した。
私はそう読んでいます。
読むと元気づけられるお話でもあります。