1 財務諸表の読み方
本書は、実用的な財務諸表の読み方を教える本です。
初版が2005年なので、載っている実例は古いです。
しかし、考え方は今でも通じます。
とはいえ、細部にわたる細かいチェックを勧めてはいません。
筆者の言葉を借りれば、健全なドンブリ勘定ということになります。
実際、どのように読んでいるのか見ていきましょう。
2 会計情報で世の中を見る
いくつかの実例をあげているのでそれを見ていきます。
2005年という時代なので、今から見ると情報が古くなっていることはご了承ください。
業績好調な例として、消費者金融をあげています。
弁護士さん方の努力による債務返済ですっかりダメになってしまいましたが、この頃は好調でした。
消費者金融といえば、貸し倒れの危険がありそうという想像が湧きます。
実際、低収入層がお客と考えられますから。
しかし、不良債権率は8%ぐらいしかなかったのです。
破綻した足利銀行は50%もありました。
経営的には健全といえるのです。
また、資金調達は2%の低利でした。
それを二桁金利で貸していたわけですから儲かるわけです。
貸した相手は若年層・主婦層だったといわれます。
高利も1度で返済すればこわくない。
こう考える人が多かったのです。
不良債権率からみると、きちんと返していた人が多かったことがわかります。
借金をしても消費したいという層が日本にも多いことがわかります。
会計から社会がわかるのです。
3 ビジネスモデルをおおまかにに読む
貸借対照表から会社のビジネスモデルがわかります。
セブンイレブンを例とします。
セブンイレブンは、借り方に現預金が多く、貸し方に買掛金が多い会社です。
このことは何を意味しているのでしょう。
現金があまるほどある会社ということです。
このような資金余力がセブン銀行のような金融業への参入を可能にしていたのでしょう。
次にソニーを見ます。
ソニーの損益計算書は、3か月で収益が増えたり減ったりと変化が大きいです。
これは、ゲーム・映画・楽曲などの娯楽産業の流行りすたりに影響されているのです。
また、音楽からゲーム、ゲームから携帯と若者が課金するものが次々に変わっていきます。
今ならスマホ関係でしょうか。
なので、長期の見通しがたちにくい。
ソニーに業績がなかなか好転しないのは、こういうところにも一因があるのでしょう。
最後に楽天を見ましょう。
最近の楽天は携帯電話事業の赤字でたいへんなことになっています。
2005年も赤字でしたが、見通しは明るかったのでした。
楽天はマイトリップネット株式会社とDLJディレクトSFG証券を買収していました。
この買収による特別損失を買ったその期に償却したのです。
それで赤字ですが、これらは楽天トラベル、楽天証券となりました。
楽天グループを支える優良企業であることはご承知のとおりです。
赤字という数値も、財務諸表を見れば種類がちがうことがわかってくるのでした。
4 総評
わたしはイデコをしているだけなので、投資界隈は詳しくないのですが、こういう実践的な財務諸表の読み方はおもしろいと思いました。
これらは公表を義務づけられている表簿ですから、誰でもHPなどで閲覧できます。
投資をするにしても、面倒くさがらずこういうことを見取る・読み取ることをしていけば、手痛いことにはならないのだろうと思いました。
でも、まあ、好きでないと継続しないかもしれませんね。