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【書評】荻原浩「陰謀論百物語」

1 本作の概要

風刺のきいた短編小説集です。

オール讀物に掲載された6編に書き下ろし1編を加えています。

書き下ろしの「戦争過敏シンドローム」だけ作風が違いますが、多くはコメディ風の社会風刺小説です。

作品が発表された時期に社会で話題となっていたことを風刺している感じですね。

2編取り上げます。

2 「ハードボイルド・ルール」

取り上げている題材は、コンプライアンス。

主人公は反社のメンバーで、出所してきたばかりです。

数年間不在にしただけで、世の中がすっかり変わってしまった。

健康志向、不倫反対、差別用語禁止。

公だけじゃなく私的生活にも厳格に適用されている。

そんな社会に戸惑う主人公。

オチは唐突な感じですが、「健全な社会」を風刺しています。

正しい社会に息苦しさを感じている人への「清涼剤」となるのか?

という作品でした。

3 「パスワードを入れてください」

何をするにもセキュリティが大事。

パスワードが必要になります。

そして、登場人物がそろいもそろってパスワード管理が甘い人たち。

なぜか記憶に自信を持っていて、パスワードをメモしていません。

そして決定的場面で、どうしても思い出せないという。

そういう話です。

そんな中でも「顔パス」を要求する大学教授が、いい感じで老害感をかもしだしています。

オチはまあ本題材に関わるものですが、まあそんなにオッとなるようなものでもありません。

パスワードに振り回される人々への共感と社会風刺を楽しむ作品です。

4 総評

★★★☆☆

本作は、設定がすべての作品ばかりです。

その意味でいうと、星新一さんのショートショートに近いかな。

つまり、もしもこういう社会だったらという「もしもボックス」の世界を楽しむ作品です。

なので、クスッとはするし、現代社会を振り返るという楽しみ方が本道なんでしょう。

物語を楽しむとか、人間の真理が現れているといった作品ではありません。

正直にいうと手に取ったのは、ライトなホラー作品を読めるかなと思ったからでした。

なにせ百物語ですから。

実際は、陰謀論を信じる人々をおもしろおかしく描いた小品。

最初からショートショートを読むつもりなら、いい作品集だと思います。