1 ジム・ロジャーズ
2019年初版、投資家ジム・ロジャーズのインタビュー本です。
ジム・ロジャーズは、10年で4200%という驚異的なリターンを得たファンドをつくった方として有名です。
また、日本に厳しい意見を持っていることで知られています。
本書もそうでした。
しかし、根拠も明らかにしているので理解できる内容です。
わたしとは異なる視点から物事をとらえていることがよくわかりました。
2 日本が衰退するわけ
日本が衰退する理由は、いびつな人口構成にあるといいます。
いわゆる少子高齢化問題です。
労働力の減少、内需の縮小など、その影響は多岐にわたります。
そのため、移民受け入れが現実的な解決策であるとしますが、日本は移民にたいへん拒否感のある国です。
この問題の解決には出産や育児の奨励ですが、高収入となった国は総じて子の数を少なくしがちです。
ロジャーズは解決は難しいだろうと考えています。
次にアベノミクスの反動です。
ロジャーズはこの政策をまったく評価していません。
古来、為替や金利を操作して豊かになった国はないといいます。
確かに日本は、プラザ合意後の円高によって、バブル景気が発生したもののその後は長期低迷に入りました。
高度経済成長時の貿易黒字をもう一度という円安誘導はわからないでもありません。
しかし、輸出が好調といえないのはご存じの通りで、米国の現地生産の優遇や人件費等の高騰で工場を国内にもたなくなったことにより、円安でも輸出増にならなくなっています。
30年前なら信じられないような国債の累積はいつか破綻する。
ロジャーズはそう見ています。
これはMMTと対立する考えですが、ロジャーズは歴史の専門家です。
過去、このような事態に陥った国家は皆、衰退への道をたどったといいます。
オリンピックで豊かになった国は一つもないし、一部の人を潤し、多くの人にはただ借金を残すだけと断言します。
わたしは、この点には大いに賛成しました。
その通り、札幌オリンピックなんて早くやめましょう。
地方の人間にとって、東京だろうがロンドンだろうが変わりませんから。
3 日本がとるべき策
ロジャーズはこのような策を日本に提案しています。
女性を活躍させよ。
日本は3年の育休がありますが、アメリカやシンガポールでは3か月で復職するといいます。
つまりは産休だけということですが、これには夫の協力や保育所の整備などが背景にあるようです。
確かに、実際育休を取っている人を知ってますが、2人3人と子どもを育てると10年弱ぐらい休暇を取ることになりまして、最も活力ある働きができる時期を過ぎてから復職することになったりしてます。
そういう生き方もいいのですが、託児できる制度整備があればキャリアを積みたい人も活きると思います。
次は移民の受け入れです。
GAFAMは移民にルーツをもつ人々が創業したそうです。
こういう活力をもたらすのが移民といいます。
それから、中国語の習得や国外投資を勧めています。
目を引いたのは、質のよい工業製品づくりを今後も勧めていたことです。
高品質高価格は売れない。
新幹線、家電等でこのことを指摘されていますが、ロジャーズは高品質を求める人はいつの時代もいるといいます。
ただし、メイド・イン・ジャパンではなくメイド・バイ・ジャパンといっていますが。
4 中国と韓国・北朝鮮
中国は勤勉であり教育制度がよく、貯蓄の割合も高い。
だから今後も中国は発展していくとロジャーズはいいます。
おもしろいのは、韓国・北朝鮮の見方です。
韓国は日本と似ているが日本より挑戦心があり柔軟といいます。
また、日本よりも少子化が進んでいるが、それは北朝鮮が解決するといいます。
北朝鮮と一つになれば、北朝鮮の女性は出産をためらわないだろうといいます。
そして北朝鮮には地下資源がある。
韓国・北朝鮮には発展の余地が大いにあるとロジャーズは考えていました。
5 総評
歴史が専門なだけあって、財政に関する考え方は保守的だと思いました。
しかし、日本の官僚も同じ考えでしょう。
岸田政権の動きを見るに、そう感じます。
そもそも自国立て債権では破綻しないという理論は、歴史上証明されていないですからね。
中国や韓国・北朝鮮の見方は、政治を省きすぎだと思いました。
北朝鮮当局が吸収するならともかく韓国と合同したいなどと考えるわけがありません。
中国についていえば、共産党の内部腐敗と権力争いが足かせになるとは考えていないのでしょうか。
という疑問がありつつも、根拠をあげつつ意見を述べているのはよいと思いました。
ロジャーズは大きな視点から投資を行っている。
こういう見方をすることも、投資をするには必要なのでしょう。
少し、自分の考えが偏っていたことに気づかされました。