1 四畳半シリーズ
もう5・6年前になるでしょうか。
森見登美彦さんの「四畳半シリーズ」にはまっていたことがありました。
きっかけは、「夜は短し歩けよ乙女」です。
この小説がアニメ映画になったのです。
たぶん、他の映画を見ていた時に予告編か何かで見たのでしょう。
絵柄がおもしろかったのと星野源が声優をしていたので見に行きました。
それから原作も読んだのです。
映画もよかったけれど、原作の方がもっとおもしろかったです。
何よりキャラクターの造形がいい。
それで、森見さんの「四畳半シリーズ」を読みあさったものでした。
本書は2020年に初出で、新作がでていたとは知りませんでした。
ファンとしては見逃すわけにはいきません。
2 設定
登場人物のいつものうだつの上がらない京都大学生です。
昭和なイメージの下宿に暮らし、希望のない日々を送っている。
エリートの京都大生がそんな暮らしをしているなんてとは思いますが、当事者にとってはそんなものなのかもしれません。
それで、モチーフはタイムトラベル・パラドックスとボーイミーツガールです。
タイムトラベル・パラドックスについては、もう出尽くしたアイデアですから、これについて目新しさはありません。
つまり、結婚する前の親を殺したら自分はどうなるか?っていうあれです。
無軌道な登場人物がめちゃめちゃにしようとする時の流れを、善良なる主人公たちが宇宙の存亡を賭けて正常化しようとします。
と書くとすごい話のように聞こえますが、「四畳半シリーズ」なので下鴨界隈で話は終始します。
その過程で、意中の人と内気な彼が結ばれようとするって感じです。
結論は話しませんが、読後はさわやかですね。
これでだいたいわかったかと思います。
3 総評
これは「原案」があるらしく上田誠さんの「サマータイムマシン・ブルース」という脚本がそれに当たるようです。
映画化もされているそうですね。
上田さんは、森見さんの「夜は短し歩けよ乙女」の脚本を書いている関係で、このコラボ作品ができあがったのだとか。
2022年にアニメ作品もできあがっていたようです。
知らなかった。
とまあ、こういう経緯もあるので森見さんのオリジナルではないのですが、四畳半神話体系のようにはちゃめちゃに展開するわけでもなく、きちんと起承転結が整った作品になっています。
物語の筋が森見さんじゃないからかなあ。
以上のようなこともあるのでしょう。
わたしにとって本作品は、キャラクターは魅力的でしたが、展開にそれほど気が惹かれるところはありませんでした。
タイムマシン・パラドックスは、ほんとうに描き尽くされているので、新鮮味がありませんし。
まあ、殺人事件や悪代官なみの舞台装置と考えればいいのでしょうけれど。
なので、森見さんオリジナルの新作「四畳半シリーズ」が読みたいと思いました。
つくづく「夜は短し歩けよ乙女」は傑作だと思います。
もちろん、この小説も平均点以上におもしろいので、未読の方には薦めたいと思いますが。