何かをするのに意志の力は大切ですね。
私は,途中で投げ出したくなる性格なので,そのことを強く感じています。
たまたま読んだ本が意志の強く持つことについての本でしたので,今回は意志の持ち方について述べたいと思います。
本の題名は「スタンフォードの自分を変える教室」です。
著者はケリー・マクゴニカルさん,心理学の先生です。
題名からすると意志の強さなどを書いている本とは思えません。
でも,読んでみてかなりためになりました。
印象に残った一つ目は,意志の筋力というものでした。
意志に筋肉があるわけではなく喩えなのですが,この喩えが秀逸でした。
つまり,著者が訴えていることは,意志も疲れてしまって気持ちを維持できなくなることがある,ということです。
これにはうなずきました。
実際,1日で使える意志の力って限界があるように感じます。
よく,綿密な計画を立てて実行できない受験生などの話を聞きます。
計画立案に満足してしまって勉強した気になるというやつです。
これを意志力から考えると,立案で意志の力を使い果たしてしまったんでしょうね。
やった気になっただけではないように思います。
重要ではないことであまり悩まないようにする。
こういうことは意志を必要とする仕事をしている人には重要だと思います。
印象に残ったことの二つ目は,バランスを取る脳という話です。
ダイエットをしている人に,カロリーのあるものを食べること厳しく戒めると返って食べる量が増えるという研究結果があるそうです。
厳しくした方が効果がありそうですが,そこが人間の心の難しいところです。
何か一つよいことをすると,バランスを取ってよくないことをしがちになるのだそうです。
実はバランスを取ること自体に価値はないのですけれど,人間の心というものはそれで安心することが多いのです。
また,強い警告はストレスになります。
ストレスがかかると人間はそれを解消する方向に働きます。
ストレス解消の手っ取り早い方法は食べること。
すなわち,ダイエットの失敗につながるのです。
行為を振り返って価値判断をするのではなく,どこに向かっているのかを確かめることが大切になるのです。
また,一度甘い物を食べると,どうせもう食べたのだからと,もっと食べてしまう心持ちになることもよくあるとか。
どうにでもなれ効果と説明していました。
自暴自棄ってやつですね。
落ち込むと誘惑に負けやすくもなるそうです。
人間はストレスに弱いので,どうしてもストレスから逃れようとします。
それを分かっていないといけないようです。
印象に残った三つ目は,弱い意志は感染するということです。
人間は,どうしても周囲に人間に影響されます。
周囲にだらしない人間がいると,知らず知らずのうちにまねてしまうのだそうです。
一般に,他人の心を理解したり共感したりする脳機能にミラーニューロン効果というものがあります。
このミラーニューロンによって,人間は社会的な行動ができるのですが,そのマイナスの効果もあるわけです。
自分ができなくなる原因を他人に求めるのはただの言い訳です。
しかし,人間にはこういう社会的な影響を受けやすいという性質があることを知っておくのは有益だと思います。
周囲の影響を受けていると自覚することで自分の行動を制限できるようになりますからね。
この本は,心理学の研究成果を裏付けとしながら,人間の意志がいかに一筋縄でいかないものかを説明しつくします。
計画を立てればいい。
警告を与えればいい。
報酬を与えればいい。
そんな単純なもので,意志を保ち続けることはできないのでした。
自分の心がどのような性質を持つのかを理解すること。
今,自分の心がどんな状態にあるのかを知ること。
そういうことを踏まえて,意志を保ち続けることが大事ということが分かりました。
この本,タイトルだけ見ると自己啓発本のようですが,実用的な心理学の本でした。
とてもおもしろいです。
心の在りように興味がある方に,お勧めいたします。