寒くてもウクレレはすぐに温かくなるのでいい楽器です。
でも,ギターはそうではありません。
冬は,もうネックが冷たくて冷たくて,触りたくなくなります。
そして,暖めると金属部品が結露します。
で,さびる。
まあ,ギターは寒い時期は決意をもって触っていました。
本棚を片付けていて「ヤング・ギター[インタビュー]エドワード・ヴァン・ヘイレン」を見つけました。
ギタリストへのインタビューをまとめた書籍です。
今回は,エディことエドワード・ヴァン・ヘイレンについて話します。
1 エディの登場前
ヤードバーズのギタリストやジミヘンの後,ロック・ギターは地味でした。
当時の洋楽は,ディスコの全盛。
イーグルスとかメガヒットしたバンドはいましたけど,ギターに注目が集まってはいませんでした。
まあ,サンタナはいたかな。
でも,彼はラテン風の落ち着いたサウンドです。
フュージョンが流行ったので,ギター・テクニック的には一部で盛り上がってはいたのです。
でも,ロックじゃありません。
つまり,ブルースから発展したロックなんてものは,主流じゃなかったのです。
2 エディの登場
ヴァン・ヘイレンは,スムーズにデビューできたバンドではありません。
LAの小さな会場で演奏していたバンドです。
何度かレコード契約の話があったようですが,流れたようです。
つまり,レコード会社は売れると思ってなかったわけです。
いくら地元で人気があったとしても。
ようやく78年にデビューできました。
後年,修正していますがエディはデビュー時,年齢のサバ読みをしています。
若く見せたかったのですね。
まあ,マネジメントの戦略とは思いますが。
ここからもデビューが遅かったことが分かりますね。
曲は,その当時会場でやっていたもの。
だからカバー曲があります。
客にうけていたんですね。
有名なギターソロ,イラプションはレコーディングで練習で弾いていた時,プロデューサーが録音するように勧めたものだそうです。
だからか,これ曲になってませんよね。
すごい演奏ではありますけど。
それで,デビューアルバムを聞いてみると分かりますが低予算のレコーディングです。
3ピースで,それだけ。
オーバーダブも最低限。
同じ年にトトがデビューしています。
同じファーストアルバム。
聞き比べてみてください。
お金はかかっていなくとも,すごくリアルな演奏。
逆にギターはよく聞こえる。
スカスカな感じではありますが,目の前で演奏しているようでもある。
ちなみに,私個人の好みは3ピースの演奏は大好きです。
初期のポリスもSRVもね。
で,デビューしたら,デイブのキャラもあったのでしょう,一躍注目されました。
大ヒットになりました。
3 エディの演奏
イラプションはともかくエディの演奏には,ひけらかしの要素はありません。
初期は特にそうですが,ギターソロが短い。
作曲して入れた感じのソロも多いです。
これは,入れないと曲そのものが短くなるので入れているみたいな感じです。
エディはクリームのクラプトンが大好きなんですが,クロスロードみたいに何回もソロが入る曲はないのです。
しかし,奏法そのものはクラプトンの発展上にある。
つまりオーソドックスです。
ほぼペンタトニック+α。
タッピングとかハーモニクスとかは,ギターのDIYと同じで何らかのおもしろがりです。
ちなみにタッピングは,コード分解もあるけど,ポジションのちがうペンタトニックスケールをつなげたみたいに弾いてます。
これらの目立つテクニックは,決して演奏の主流ではない。
でも,リズム感もいいし指がよく回る。
結果,速く正確なわけで技術としては他を圧倒していたのです。
1984の頃は,もうスケールとかどうなってんのみたいなソロも増えましたけど,これはホールズワースの影響みたいです。
ただ,スケールアウトもジャズ的な理論があるわけじゃなく,ホールズワースっぽく弾いてみた,みたいな感じですね。
それにしても,ギターを道具としてこれほど徹底して扱った人はいませんでした。
ギブソンのPAFを溶かした固形ワックスにドブ漬けするなんて,もったいなくてできないでしょう。
エディのギターは,ホームセンターで買ってきた部品みたいなのが付いていました。
高価な楽器,ピカピカの楽器の対極です。
インタビューで,機材についての質問に答えていますが,おそらくまじめに答えていません。
これは,機材についてのきちんとした知識がなく,適当に「いい音でた」って感じなので,ちゃんと答えるのが嫌だったのではないかと思います。
まあ,結果オーライのギタリストです。
4 デイブが抜けた後
5150以降のヴァン・ヘイレンは,王道ロックサウンドになりました。
ジャーニーとかフォリナーとかトトとか,そんなサウンドです。
これは,元々こういうサウンドがいいとみんな思ってたんだけど,低予算デビュー作がうけちゃったからやめられなかった,てのが本当なんじゃないでしょうか。
でも,ガレージバンド,ライブハウスバンドっぽいヴァン・ヘイレンが好きだったなあ。
中年以降は難しいのでしょうけど。
90年代以降のエディは,ギタリストとしてはピークを過ぎていました。
それでも世界中のギタリストに敬愛されていました。
人柄が明るかったからでしょうか。
見ていて楽しくなる人ではあります。
まあ,その後のバンドの動勢を見てると,さわやかとはいえないところも多いのですけどね。
5 自分にとってのエディ
私は,ヴァン・ヘイレンの横のりロックがあまり好きじゃなかったので,そんなにコピーをしませんでした。
ランニング・ウィズ・ザ・デビルと叶わぬ賭けぐらいかな。
あとジャンプのソロはやったと思います。
イラプションはハイフレットの手前で止めました。
聞いても何弾いてんのか分からなかったので。
自分の音楽性が低かったのでしょう。
イギリスのきちんと弾いているギタリストが分かりやすくてよかったのです。
初期のリッチーとかゲイリーとかね。
でも,デビュー作と1984はたまに聞きたくなりますね。
それに暑い夏に,昔のヴァン・ヘイレンの音は合っていると思います。
むやみと元気になりますから。
エディは,やっぱりいいですよ。
インタビューも楽しいし。
アルバム1枚通して聞くのはつらいけど。
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