ここ数年,コミュニケーション力ほど重視されている力はないかもしれません。
就職関連に書籍,サイトではコミュ力,コミュ力と繰り返し出てきます。
そこで語られるコミュ力とは,他人とコンタクトを取る力が中心のようです。
要は陽キャかどうかってことのようです。
しかし,コンタクトをとったからといってコミュニケーションが成立するわけではありません。
今回も刺激的なタイトルの本を読みました。
「こんな簡単な話が,なぜ通じないのか!」というのがそれです。
表紙を見て,(怒ってどうする)と思いました。
最近,真意を伝えるのが難しいと感じたこともあり,何か参考になるところはないかと読み進めました。
内容について,感想を交えながら話します。
冒頭,著者は話せば分かるわけではないと述べます。
まあその通り。
板垣退助には悪いのですが,話したって分からない人はいます。
そこであきらめてしまっては,社会生活が成り立ちません。
そこでどうするかが大切になります。
筆者は続けて,コミュニケーションは共にするやりとりだといいます。
つまり,話し手と聞き手の共同作業であると。
こういうわけです。
確かに,聞く耳持たぬ人には通じませんからね。
とすれば,共同作業の場に聞き手を立たせなければなりません。
どうするか。
筆者は,コミュニケーションの成立には三つの条件があるといいます。
双方向性,対面性,水平性の三つです。
まずは,水平性が大切であると述べます。
話し手と聞き手に上下関係があってはいけないのです。
上から目線の話,教えてやるぞという姿勢。
こういう態度では,理解しようという態度を引き出すことはできないといいます。
そして,内心けむったがれながら聞き流されると。
早く話が終わらないかなあ。
これが聞き手の本音になります。
これでは分かる話も分からなくなる。
まずは同じ目線で話すことが大切なのです。
双方向性は話をキャッチボールです。
話し手,聞き手を固定してはいけないということです。
話は自分4相手6ぐらいのバランスがよいと筆者はいいます。
そのくらいの態度が共同性を成立させるのでしょう。
対面性は,生身の人間のやりとりであることを意識する。
言葉だけが伝えるものではありません。
表情,身振りなどが言葉よりも重要なことを伝えることがあります。
そういうことに注意するようになると,より分かりやすく伝えることができるようになります。
話を理解するかしないかは,話し手に手中にはありません。
あくまで聞き手が決定権をもっているのです。
そういう聞き手にすることが大切なのです。
この本の後半は分かる説明の仕方の具体的テクニックの話になります。
例えば,説明はあっさり要点を話すとか,最初に話の全体像を示すとか,具体例を適宜いれる,体験談があるとなおよい,などです。
実用的でよかったのですが,コミュニケーションを成立させるためという前半に比べると普通の実用書的でおもしろくはなかったです。
しかし,役立つことはまちがいないので興味ある方は読んでみてください。
最後に,使ってはいけないフレーズというのがあって,これはおもしろかったです。
一つは「何度言ったら分かるんだ」です。
もう一つは「こんなことも分からないの?」です。
どちらも水平性をぶち壊しますね。
よかれと思って使う言葉の中にもNGがあります。
「簡単ですよ」という枕ことばです。
相手の安心感を引き出すつもりなのでしょうが,それで分からなかったら劣等感を刺激してしまいます。
そういう配慮も必要なわけです。
話せば分かるという信念はすばらしいと思いますが,実現するためには技術と努力が必要です。
身近な人にこそ,こういう努力をすべきなのかもしれない。
そう思いました。