久しぶりのマネー本です。
とはいえ、講談社現代新書の一冊なので、読み応えのある本でした。
私、学生の頃から講談社現代新書のファンでして、岩波新書よりもとっつきやすくておもしろい内容が多かった印象があります。
というのもカバーがクリーム色だった頃の話で、白になってからは流行を追ったような本も出ていましたけど。
この本は、証券会社の未来予想のような話ではあるのですが、現在の証券会社の状況が分かるという点で、とてもよい本でした。
1 手数料収入が柱です
証券会社の収入の柱は、手数料収入でした。
なんだ、今の銀行と変わらないじゃないか。
と思ったのですが、証券会社は昔から売買手数料を収益の柱としてきたのです。
株が素人が直接買えるものではなかったので、玄人に頼む。
こういう図式だったわけですね。
ここまではいいのですが、この手数料を稼ぐためにはどうしたらよいかって話になります。
手数料なのだから、件数が多ければ儲かる。
とまあ、こうなりますね。
しかし、買う人や売る人がたくさんいて、買ったり売ったりがたくさん行われていれば儲かりますが、株って商品はどうでしょう。
現在はずいぶんハードルが下がっていますが、一見さんお断りみたいなところありますよね。
そして、昔は株で全財産なくしたなんて話もありました。
まあそういうのは、通常の売買じゃなくて信用取引だったりするわけですけど、一般には分からなかったと思います。
というわけで、買う人も売る人も少なく、その機会も多くない。
じゃあ、どうやって儲けるかって話になるわけです。
2 顧客を囲い込む
株をやっている資産に余裕がある人は限られていました。
その人たちに売ったり買ったりを繰り返させることが手数料収入を伸ばす方法だったわけです。
そのために、ファンドラップなどを新しく作ったり、新規上場株をあてがったりといろいろ「魅力的な」商品を作るわけです。
売った商品が上がればいいですよ。
win winでみんな幸せです。
でも、下がったらどうしましょう。
証券マンは出入り禁止になりますね。
ということがいつでもどこでも起きていたのです。
なので、証券マンの人事は回転が早い。
担当がどんどん変わるっていうことをしていたそうです。
そして、売り上げや手数料のノルマ制。
顧客に誠実でありたいといってもほどほどに。
こんな感じになっていたそうです。
それでも、顧客が離れなかったのは、まあ市場から退場した方も多いでしょうけど、株価が上がっていたからだそうで、要するに市場に助けられた商売だったわけです。
3 証券会社がなくなるとは
本書は、こういう従来型の証券会社から抜け出すということを述べています。
具他的には、手数料収入からIFA(ファイナンシャルアドバイザー)による資産の相談などに収益を移していくことを想定しています。
そして、IFAからの助言を基に株や投信を買うようになれば、従来の証券会社の役割はなくなっていく。
これが証券会社がなくなるという意味です。
正直、IFAでそんなに儲かるの?っていう疑問もあるのですが、資産の預かり業務もするそうでして、多角的な資産管理に乗り出すということなのかもしれません。
手数料ありきよりは、顧客にそった仕事になりそうです。
4 総評
さて、この本を読んで思ったのは、昭和には証券会社に限らずこういう話はどこでもあったよなあ、ということです。
仲介手数料を口銭といったりしますが、舌先三寸で稼いだ金と自ら蔑んでこういっていました。
性能のよくない在庫の冷蔵庫をさばいたなんて話は、よく聞こえてきました。
市場の透明性なんて話は、どこの世界でもある話で、情報が金になるのはいつの時代もそうだったのです。
でも、ほどほど感というものがあって、やり過ぎると社会から弾かれる。
昔の日本ってそんな感じでした。
なんか昭和懐古番組見てると、日本人は誠実だったみたいな話がありますが、それは職人さんとか農民さんとかの話であって、商人には当てはまらなかったように思います。
でも、今の情報化社会ではこんな商売は成り立ちにくいんですよね。
証券会社だけじゃなく、みんな変わってほしいと思います。
まあ、あまり金のない私のところにも銀行やら保険やらが声をかけたりメールを送ってきたりしますが、メールは拒否できますし、声かけても相手にしないとそのうち営業かけられなくなります。
令和でこういう手法は、成り立つわけもないんだよなあ。