「神の魚・サハール」
そんな刺激的な名前にひかれて手に取った本です。
これは,ほんとうにおもしろかった。
夢中になって読んだ本の一つです。
小林龍彦さんの「人生を激変させた『神の魚・サハール』」です。
今回は,ネタバレになっています。
1 海外を旅すること
海外を旅することには,ロマンを感じます。
70年代のヒッピー文化と重なるところがあります。
時代は少し後ですが,「深夜特急」などにもそのロマンを感じます。
筆者はタイで手に取ったガイドブックの内容にひかれてネパールを訪れます。
こういう旅行ができる身分だったらなあと思います。
仕事止めればできるだろ。
そういわれることは承知で,無理なんですね。
もう社会に取り込まれてしまっているので。
まあ,勇気がないだけかもしれません。
そういえば,こんな場面がありました。
筆者がネパールで仲良くなった男に,息子を日本にやるから頼むと話されました。
しかし,筆者は断ります。
自分は,日本でたいした人間ではないと。
この場面を読んで,自分にできないこと,決心できないことを筆者はしているんだなあと感じました。
自分にできることは,海外を旅することではなく,海外についての本を読むこと。
ちょっとさびしくなりました。
2 サハールの魅力
サハールとは,筆者が聞き取った現地発音みたいです。
別の本では,別のカタカナ表記でした。
それはさておき,どんな魚かというと。
日本でいうとニゴイのような魚だそうです。
ニゴイってあんまり評価高くないような気がします。
しかし,ルアーをやっているとけっこうアタックしてきますし,かかるとトルクフルな引き方をしますし,すごくいい対象魚です。
まあ,コイのにせものみたいな名前がよくないのかもしれません。
ただ,サハールは1mを超え,ウロコは黄金で,すばらしいファイトをする魚だそうです。
ニゴイの何倍もすごいのだと思います。
まあ,アブラヒレがあるからと,チカを釣ってヤマメを想像してはいけませんよね。
そのくらいちがうのでしょう。
でも,コイの仲間がルアーのすばらしい対象魚ってめずらしいですけどね。
あと食べてもおいしいそうです。
そして,なかなか釣れない。
何年も追いかけたくなる魚。
確かにそんな価値がありそうです。
3 現地の人との交流
出てくるネパールの方々が親切で魅力的なんですね。
まあ,当時の現地の方から見れば,金のある外国人が来たからもあるんだと思いますが。
でも,ネパールの方ってよい人が多いように感じました。
よく考えれば,道楽で海外に来る外国人って正体不明だと思うのですが。
現地ネパールの当時の生活の様子が分かって,とてもエキゾチックでした。
4 釣果
筆者はサハールを釣ることができました。
しかし,針にかかった最も大きな獲物は逃がしました。
どうでしょう。
いい結末だったと思います。
釣りって,貪欲になると切りがないんですね。
まあ,人生ってすべからくそういうものかもしれませんけど。
その時の釣果で満足する。
こういう心境が大切だと思うのです。
もちろん,精神衛生的な意味においてもです。
筆者は,ネパールを再訪する理由ができたと喜ぶこともできるでしょう。
釣りの本として,私は満足しました。
5 最後に
この本おそらく絶版です。
私も手元にはありません。
残念です。
ぜひ電子書籍でいいから再版させてほしいなあ。
だって,とってもおもしろいから。