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半沢直樹と「羅生門」

1 「半沢直樹」主人公の魅力

 「銀翼のイカロス」を読み進めています。
 この小説の主人公の魅力の一つは,ぶれないことでしょう。
 権威や権力などのよこしまな力に屈しないことです。
 現実ではたいへん難しいことです。
 できそうでできないことができる。
 だから主人公なんですね。
 しかし,読み進めているうちに別な小説の別な主人公のことを思い出しました。
 「羅生門」の下人です。

2 羅生門

 芥川龍之介の「羅生門」は,高一の教科書に載っていました。
 知っている方も多いと思いますので,ネタバレで書きます。
 短い小説で,登場人物は二人だけ。
 下人と老婆です。
 簡単にあらすじを話します。
 羅生門で雨宿りした下人がいました。
 そこには死人の髪の毛を抜く老婆がいました。
 老婆はこれを売って生活しているのです。
 下人は正義感から老婆をおさえます。
 老婆は死人の髪を売るのはよくないが生きるためだと話します。
 それに髪を抜かれた女も生前に人をだましていたのだと告げます。
 これに感化された下人は老婆の服を奪って逃げます。
 自分も生きるためにするのだと。

3 老婆の論理

 老婆の論理は二つあります。
 一つは,生きるためにルールを破るのは仕方ない。
 もう一つは,自分だけがルールを破っているわけではない。
 今回私が気になっているルールは二つ目です。
 ルールを破っているものがいるのだから,自分もルールの破ってもよい。
 この考えです。
 これは半沢直樹ならふざけるなで終わるところですね。
 でも,老婆の変わった考えですませられないところがありますね。
 世の中でよく見る考えだからです。

4 日本人ジョーク

 各国の気質をネタにしたジョークがあります。
 沈没船で海に跳びこませるために一言などです。
 アメリカ人には,ヒーローになれるよ。
 ドイツ人には,決まりです。
 イタリア人には,美女にもてますよ。
 などなど。
 日本人には,みなさん跳びこんでいます。
 これで笑うということは,こういう認識が一般的なのでしょう。
 結局「公平」の価値観が強いのです。
 みんながしているのだから自分もする。
 誰もしていないのだから自分もしない。
 日本人全員がそうだというわけではありませんが,こういう傾向はよく感じます。
 これ,老婆の二つ目の論理なんですね。

5 公平の幻想

 公平という概念は,みんな同じだけではないでしょう。
 現実には,みんなが公平感を感じているということが大事だと思います。
 多少は違っていても「公平である」と感じているということです。
 実際は,自分が不当に扱われていない,ということになると思います。
 結局,自分の利益不利益が基準になっているように思います。
 そう,自分なんですね。
 自分がどうであるかということが大切になってくるのです。

6 下人の論理

 下人には,独自の論理構成はありません。
 老婆と髪を抜かれる女を自分と老婆に置き換えただけです。
 そしておそらくは,この論理の薄汚さも知っているのです。
 世の中のすべての人が老婆の論理を使えば,理も法もない,実力だけの世界に世界になります。
 それは自分だって守られない世界です。
 つまり,本気で信じているわけではない。
 単に,今をしのぐ方便として老婆の言い草を返しただけでしょう。
 だからこそ,誰も知らないどこかに行ったのだと思います。
 下人には信念も理想もありません。
 ただ,自分を一時的であったにしても正当化したいという気持ちがあっただけです。

7 「下人の論理」を信じる人

 下人はそうでしたが,「おれも人の物を奪ってよいのだ,みんなしているからいいのだ」と本気で考えている人が増えたらどうでしょう。
 私は,先の日本人ジョークから考えると,日本がそうなりそうでこわいです。
 自分の利害がからみますから。
 そうはならないだろうと,世の中を信じたい気持ちがあります。
 半沢直樹のようなヒーローが受け入れられるのは,そんな世の中じゃ嫌だと考える人が多いからでしょう。
 そこに望みがあります。
 ただ世の中には,他人事には賛成しても自分のことは別って人がいますからね。
 そんな人が多くないことを願います。 

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