1 はじめに
図書館で手に取った本の感想を述べます。
開高健の「夏の闇」です。
読書中は,不思議な感じを持ち続けました。
後書きまで読んで分かったんですけど。
2 停滞する展開
予備知識なしで読み始めました。
ちょっと何の話かも分からなかったです。
日本でないことは確かです。
南国であることは分かりました。
主人公は何もしません。
ただ,私には無駄話と思える話を延々としています。
途中で知り合いの女性が現れます。
博士論文を執筆中の大学院生のようです。
二人でだらだら生活してます。
そんな展開ともいえぬ展開でした。
3 動いたと思ったら終わる
ちょっと動きがあったのは釣りの場面です。
カワカマスを釣りに行ったのです。
作者は釣り好きですから,挿入されたのでしょうか。
その場面では,主人公も女性も幸せそうでした。
釣りから戻ると動きがあります。
どうやら主人公はジャーナリストらしいです。
戦争に取材に再び赴くようです。
女性はとめます。
そして,おそらくは出発を決意した場面で終わります。
あっさりとした小説です。
4 後書きを読んで分かったこと
どうやらベトナム戦争の従軍記者を題材とした小説らしいです。
で,この小説は連作の続編で前編があると。
そこで,主人公は戦争取材に精神的に衝撃を受けたと。
それでこの小説では休みながら回復を図っていると。
そういう小説であるらしいのです。
この小説,小見出しもないので構成も不明です。
まあ,発表当時は常識だったのかも知れません。
ベトナム戦争は大事件でしたから。
つまり,精神的な復活が題材だったわけです。
5 精神的な復活とは
最近は,PTSDだのレジリエンスだのの用語が増えてきました。
精神的なショックに対する回復がテーマとなる言葉たちです。
そういうことが一般的にも大きな問題ととらえられているのでしょう。
この主人公のようなリフレッシュで回復するのでしょうか。
この主人公は経済的にも人間関係的にも恵まれているようですから,一般の方には当てはまらないかも知れません。
そういう条件が整ったら回復するのかな。
そうでもない気がします。
結局,意思が未来を向いているかどうかのような気がします。
精神的な復活の過程だったとすると,展開のない展開も分かるような気がしました。
現在,回復過程にある方が読んだらどう思うのかな。
自分がそういう状態になったら再読したいと思います。
6 最後に
精神に復活って難しい問題ですよね。
人によって変わると思うんです。
一般化できるのかな。
でも,現代的な問題だと思うんです。
私も興味ありますし。
他にもこれを題材とする小説ないのでしょうか。
もっと読んでみたいと思いました。