世の中には待てない人という方がいます。
結果がすぐほしい人です。
なんでもスピード感をもって行うのがよし。
最近は,こういう感覚が主流になってきているようです。
しかし,待てない人というのはそういう感じではありません。
中間を認められない人です。
白黒はっきりつけたい人です。
というか,白黒はっきりつけないと安心できない人です。
今回は,このことについて話します。
1 志賀直哉「剃刀」
志賀直哉に「剃刀」という短編があります。
以下,ネタバレで話しますのでご容赦ください。
私がこの作品を知ったのは「中春こまわり君2」でした。
ミステリー仕立ての「塩田」で小道具として取り上げられていたのです。
興味をもち,作品を読んでみました。
まあ一言でいえば,完璧主義者の破綻です。
血をにじませたことのない剃刀名人が発熱不調で剃りまちがえてしまいます。
我を見失った名人は,手に持った剃刀で客を…,といった内容です。
さすが小説の神様。
むだのない筆致で描写していきますね。
今回はその表現力ではなく,この主人公について話したいと思います。
この主人公,職人の典型として描かれていると思いますが,待てない人の典型でもあります。
妥協なし。
全か無か。
そんな感じの生き方です。
発熱のせいで正常な判断ができなかった。
そう解釈もできますが,おそらく違うでしょう。
熱がないときも,こんな感じだったにちがいありません。
弟子や妻の会話からそう感じます。
いい面でいえば,切符がよく後腐れがない。
悪い面でいえば,融通がきかない。
こんな感じなので,日常生活ではそんなに困らないだろうと思われるでしょう。
でも,待てない人には,次のような一大短所があるのです。
2 評価が硬直的
待てない人は,一度決めたことは振り返りません。
それは既定事項なのです。
これが人間に対してもそうなのです。
特に,嫌いな人・嫌な人と決めたらずっとそのままです。
嫌っているだけならいいのですが,たいていは攻撃的になります。
人には長所も短所もある,
人当たりがいい時も悪い時もある。
そんな風には,考えられません。
悪いは悪い。
そんな感じです。
仲良いうちはいいのですが,深く関係するといろいろぶつかってきます。
3 なぜなのか
なぜこうなのでしょう。
深い理由は分かりません。
おそらくこうじゃないかという,私の推測を話します。
あくまで仮説ですよ。
脳の意識を保留している力が弱いのではないかと思うのです。
保留していると,そこにある程度リソースを割かなければなりません。
その状態で,別の処理をする。
そうすると脳に負担がかかるわけです。
ここが弱い。
なので,保留した部分を早く解放したい。
なのでとっとと決めて,今の処理に注力する。
こんな感じなのではないかと思うのです。
こんな風にいわゆる性格といわれているものも,生理的に影響されていることが大きいのじゃないか。
と,私はそう思っています。
マジカルナンバー7±2。
意識して扱える情報量の数字です。
ある数字を聞いて,逆から言える数の量は,5~9ぐらいである。
作業記憶容量ともいわれますが,意識で扱える量はこのくらいだそうです。
この数値だけではないと思いますが,待てない人はこういう量が少ない。
または維持できる時間が短い。
こうなのだと思います。
4 決定的ではない
扱える量が少なくとも,紙に書き出すとか対応策はいろいろあります。
つまり,決定的で仕方ないことではありません。
しかし,自覚していなければ対策は取りません。
「嫌なやつ」からの忠告は聞きません。
それは「攻撃」ととらえるからです。
自ら対応するしかないと思います。
なので,こういう人に出会ったらどうするか。
人生ここまで生きてきた私の結論は敬して遠ざくです。
その人に割り当てるエネルギーがもったいないので。
残り少ない人生は,自分が納得したことに使いたいのです。
冷たいといわれても,まあ甘んじて受け入れるかなあ。
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