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言葉の社会性と創造性

1 言葉の機能

 今日は,言葉について考える機会がありました。
 それで,言葉の機能について初歩的な考察をします。
 私は言葉には二つの機能があると思います。
 社会性と創造性です。

2 言葉の社会性

 言葉のもつ機能の一つは社会性です。
 いうまでもなく,言葉は意思を伝える道具です。
 私たちは,言葉によってコミュニケーションを取ることができます。
 身振り手振りや物を指さすことよりも効率的で複雑な意思疎通を行うことができます。
 このためには,言葉の意味を共有していなければなりません。
 同じ言葉がある人はこういう意味,また別の人は別な意味では困ります。
 文字通り意味が通じません。
 ですから,言葉にはルールとしての社会的合意が必要です。
 それが辞書的な意味だったり文法だったりするわけです。
 ただし,どこかに完璧な辞書や文法があるわけではありません。
 言葉のきまりは,個々の頭の中にあります。
 ある人の頭の辞書と別の人の頭の辞書が一致しているとは限らないのです。
 とはいえ,違っているのは細部です。
 大筋が違っていたらコミュニケーションができませんものね。
 しかしながら,言葉のきまりは各自がもっている辞書や文法の無意識的な合意であるとはいえるでしょう。
 ここが言葉が他の人工的なコード,例えばコンピュータ言語など,と違っていておもしろいところでもあります。

3 言葉の創造性

 言葉には,もう一つ大きな機能があります。
 それが,言葉の創造性です。
 私たちは,知覚したものそれ自体を知るのではなく,ある観念の認識としてそれを知ります。
 その観念は,自分が創造したものです。
 それに言語で表現した時,それを概念として取り扱えるようになります。
 これが,ある観念を言語を使って創造したということです。
 この観念は,何も目新しくなくともよいですし,一つの言葉でなく文で表してもいいのです。
 目新しくなくとも,新しい言葉を作り出さなくてもそれは言葉による創造なのです。
 このように新しい観念を生み出すことが言葉のもつ機能の一つなのです。
 私たちがおしゃべりをする時,何か人に伝えたくなるようことを思いついた時,言葉による創造を行っているのです。
 すべての人が詩人ではありませんが,詩人と同じような機能を私たちも使っているのです。
 また,本を読んで内容が分かることも,言葉の創造性を使っているのです。
 そうでなければ,本はインクのしみに過ぎません。

4 社会性と創造性の共存

 社会性と創造性は相反する性質です。
 社会性が強ければ,新しい意味など創造できません。
 また,創造性が強ければ意思の共有化は不可能でしょう。
 言葉の社会性と創造性は,絶妙なバランスを取りながら,各個人の中に存在しているのです。
 ここが言葉のおもしろいところです。
 私たちは,よく分かる文章やよく分かるスピーチを求められます。
 そういう研修も多くあります。
 その一方で,惹きつけられる文章やスピーチは,創造性が豊かなものだったりします。
 こういうところに言葉の魅力があると思います。
 言葉が単なるコミュニケーションの道具でなかったことに感謝したい気持ちでいっぱいです。