カウンセリングなどの心理学に興味があります。
カウンセリングといえば河合隼雄先生です。
そこで,河合先生の著書を読むことにしました。
今回読んだのは「日本人の心を解く」です。
カウンセリングそのものというよりは,日本人一般の心象解釈の本でした。
1 夢の解釈
最初に夢についての解釈が述べられます。
心理学で夢の分析といえばフロイトです。
深層心理が夢に表れる。
しかも象徴的に表現される。
その象徴を分析・解釈する。
それがフロイトの精神分析です。
まあ私には,なんでもかんでも性に結びつけて解釈しているように見えるので,どうかなあと感じています。
河合先生は,ユング心理学を学びました。
それで,フロイト派とは少し解釈が異なるようです。
日本人の夢についての分析は,現実と夢が相互に行き来するというか,その区別があいまいになっているということでした。
夢を真実として受け取る。
そして,自分と他者,事物が相互に関連した世界の中で,それぞれが「じねん」の流れの中を進んでいく。
そういう解釈がなされていきます。
ちょって難し過ぎて分からないところがありますが,西洋的分析ではなく相互に関連した流れの中で夢をとらえていく。
こういうことなのかと思いました。
確かにフロイト的な分析とは,明らかに違います。
さて,題材として取り上げられている文献は,中世のものです。
なので,どの時代にも通じる日本人の心というよりは,当時の日本人の心なのかなあと思いました。
今もこのように夢をとらえているという実感はわきません。
2 神話の解釈
夢に続いて日本神話についても分析や解釈がなされます。
この分析や解釈の観点として,トライアッドが使われます。
トライアッドって何でしょう?
そう思って調べたところ,第一者・第二者・第三者がいる状態のことだそうです。
それで,本を読み進めると,日本神話には繰り返しトライアッドが表れるとのことです。
代表的なものは,アマテラス・スサノオ・ツクヨミです。
そこで,河合先生が着目するのは第三者です。
このトライアッドでいうとツクヨミです。
この第三者が何もしない中空だといいます。
そして,何もしないことで均衡がもたらされているとのこと。
日本神話においては,第一者や第二者が勝利を納めることが結末ではなく,あくまで均衡がとれた状態を目指すのだそうです。
そして,それに貢献するのが何もしない第三者です。
これが現代にも生きていて,政治的に天皇が第三者を担っているという解釈をなされました。
先の夢の解釈と同様に,自我の主体性とは別の力学が働いているというお話ですね。
神話の話はそうだとしても,現代の天皇制についてはどうでしょう。
お話としてうかがっておきますくらいかなあ。
3 昔話の解釈
最後に日本の昔話についての分析や解釈が示されます。
西洋の昔話との比較なのですが,物語の解決策が異なるとのこと。
西洋は倫理的に解決されるのだそうです。
簡単にいえば,善が勝ち悪が敗れる。
こういう図式です。
対して日本は美的に解決される。
美しい調和として解決される。
なのだそうです。
例として,嫁になった月見が草の話などが挙げられているのですが,ピンときませんでした。
浦島太郎のおしまいは美しいのかなあ。
人によってはそうかもしれません。
桃太郎は勧善懲悪な感じもあります。
ただ桃太郎は,近代になって変遷したという説もありますが。
確かに,善悪がはっきりしたお話ばかりというわけでもありませんし,きれいに閉じられなかったお話もありません。
それを美という感覚でまとめられてもしっくりこないですね。
4 どんな人にお勧めか
私はカウンセリングの役に立つのではないかと思って読み始めました。
しかし,日本人の集団的無意識の分析・解釈のお話でした。
ユングの分析心理学の理解を深めたい方にはいい本なのでしょう。
カウンセリングで相手の心理を分析・解釈することに,直接的に役に立つ本ではなかったように思います。
誰にお勧めかといえば,こうなるでしょう。
河合隼雄著「日本の心を解く」は,分析心理学の教養を深めたい方におすすめです。
私にもいつか役立つ日がくるかもしれません。
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