ギスカブログ

 読書しながらスモールライフ「ギスカジカ」のブログ

富士リールに会いたい


 思い出に残るものって誰にでもあるんじゃないかと思います。
 根魚釣りの話で釣り道具について語っていたら,あるリールのことを思い出しました。
 とても思い出に残っているリールです。
 今回はそのことを話します。

 

1 富士リールとの出会い

 小学校3年か4年のころだったと思います。
 叔父から釣り竿とリールをもらいました。
 1メートルほどのペナペナの柔らかい竿と黒くて丸い小さなリールです。
 おそらくは,湖でワカサギを釣るためのタックルだと思います。
 近くにそんな釣り場がなかった私はそれを穴釣りに使うことにしました。
 しかし,釣り竿は,柔らかすぎてまったく使いものになりませんでした。
 海では潮に流されないくらいのおもりが必要なのですが,それを使うと曲がりすぎてまともに当たりがとれなかったのです。
 竿はしまい込んでしまいました。
 リールはとても魅力的でした。
 このタイプのリールは片軸受けリールとかタイコ型リールと呼ばれていたのですが,バームクーヘンのような糸巻きに糸を巻いていくリールです。
 とっても原始的なリールですね。
 これは,釣り竿についている糸を通す穴,ガイドと呼んでいます,などを作っている富士工業が作っていたリールです。
 富士リールと呼んでいました。

2 富士リールの特徴

 このリールで一番気に入ったのは,プラスチックでできていたことです。
 それの何がいいの?という感じでしょうが,プラスチックはさびません。
 海釣り少年には,これに勝る魅力はないといってよいでしょう。
 当時の高価な金属製のリールは,1日海で使っただけでさびができました。
 それが当然でした。
 小学生にとって高価なリールをさびさせてしまうのはもったいなく,思い切って使えなかったのです。
 このリールならどんどん使うことができるそう思いました。
 そして小さく軽いので,小学生にぴったりでした。
 竿をずっと持ち続ける釣りで軽さは正義です。
 そのため,防波堤だけでなく,磯でも船でもこのリールを使いました。
 短所も多かったです。当時もっとも気になったのは音です。
 巻くとチチチチとストッパーの音がしました。ラチェット音というのですが,これには不満でした。
 釣りをしている時は,なるべく魚に気付かれたくないので,音を出したくないのです。
 今では,これも個性のようで気に入ってますが。当時はストッパーを切って,フリーにして巻いたこともあります。
 まあ,トラブルが多いのでストッパーは結局かけるのですが。
 糸を巻くスピードが遅いのも欠点です。
 ハンドルと糸を巻くスプールが直結なので,ハンドル1回まわすとスプールも1回まわります。
 普通のリールはギアを組み込んであって1回まわすと3回転とか4回転ぐらいするのです。
 富士リールには,3種類ぐらい直径が異なるサイズがありましたが,私が持っていたのは一番小さいサイズでした。
 ですから,もっとも巻き取りスピードが遅かったのです。
 それでも防波堤では問題なかったのですが,船釣りなどの糸を長く出す釣りでは,仕掛けを回収するのにたいへん時間がかかりました。
 巻き取りの構造から,仕掛けを遠くに投げる釣りには,原理的に向いていなかったのですが,富士工業はさすがの工夫をしていました。
 このリールは,なんとスプールを横転させることができました。
 スプールをスピニングリールと同じような向きにすることができたのです。
 この仕組みのおかげで,トラブルなく投げ釣りをすることもできました。
 まあ,遠くに投げれば回収がたいへんでしたし,糸ヨレの防ぐ対策はないので,できなくはないよ程度の機能でしたけれど。

3 富士リールとの再会待ち

 このリールで様々な魚を釣りました。
 ビール瓶サイズのアイナメ,家族に喜ばれたカレイ,ソイやタケノコメバルギンポやエゾイソアイナメ
 海に落としたこともありますし,自転車から落としてキズを付けたこともあります。
 少年時代の釣りのお供でした。
 でも,今は手元にありません。
 実家を離れていた時に,実家が引っ越しをしました。
 そのどさくさでどこかにいってしまったのです。
 大人になってからほしくなったのですが,生産中止でした。
 横転する機能を省いたものは,10数年くらい前まで作っていたようです。
 それは手に入れたのですが,どこか自分のリールという感じではありませんでした。

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富士リール

 あの頃の富士リールを探して,ヤフオクや中古釣り具店をのぞくことがあります。
 しかし,本当にしたいことは,新しいものを買い求めることではありません。
 実家の物置の片隅からひょっこりあのリールが現れて,再会できないかなと期待しています。
 自分の富士リールをもう一度手にしてみたいのです。