ウキ釣りに憧れがありました。
いかにも釣りをしているというスタイルがよかったのです。
自分のしている穴釣りが,マンガや釣りの本にに出てくることはありません。
本に載っているウキ釣りを,わくわくしながら読みました。
こんな釣り方をしてみたいと思ったのです。
けれども,近所の釣り場で,ウキ釣りができるところはありません。
ウキ釣りの思い出について話したいと思います。
1 ウキ釣りといえばウミタナゴ
小学生の時のメイン釣り場は,近所の防波堤でした。
ウキ釣りでねらえるターゲットといえば,ウミタナゴです。
釣りの解説書には,海釣りの基本としてよく載っています。
なので,取りあえず挑戦してみました。
釣り竿は裏山から切り出した竹です。たぶん3メートルぐらいだったでしょう。
エサは当時スナエビといっていた,砂浜の波打ち際で採れた小さなムシ。
今考えれば,カニやエビの幼生だったと思います。
それを防波堤の先から投げ入れました。
当時,マキエの代わりに砂をまいていました。
キラキラ光って落ちるので,魚を集める効果が少しはあったのでしょう。
しばらく待ってみましたが,ウキは少しも沈みません。
まったく釣れませんでした。
2 ウミタナゴを釣るには
ウミタナゴ釣りをしている時,近くおじさんの竿が大きく曲がりました。
ぐんぐんと竿先が何度も引き込まれています。
釣り上げられた魚は大きなマルタナゴでした。マルタナゴとはまるまる太った大きなウミタナゴの通称です。
うらやましくてじいっと見ていました。
おじさんが使っていたのはリール竿,仕掛けを10メートル位い先に飛ばしていました。
一緒に来たらしい人に向けて,遠くに入れたら釣れた,ということを話していました。
なるほど,分かりました。
こちらから見えない魚は釣れる。見える魚は釣れない。
こういうことです。
私の竿で届くくらいの,防波堤近くを泳いでいる魚は,エサを見切っているのでしょう。
釣り格言「見えてる魚は釣れない」とは,よくいったものです。
そこでリール竿を用意して,とはなりませんでした。
そもそもそれに向いている竿をもっていません。
そして,これが一番大事な点ですが,リール竿を使ったウキ釣りは,自分がしたいことではなかったのです。
本の中で描かれていたように,のべ竿でのウキ釣りがしたかったのです。
何回かチャレンジしたのですが,この釣り方ではウミタナゴは釣れませんでした。
まちがってメバルが釣れたことはありました。まあ,それはそれでうれしかったのですけど。
偶然,見えるウミタナゴを釣ったことがあります。
別の魚をねらって,サビキ釣りをしていた時のことです。
水中で上下するサビキを追いかける魚が見えました。
クンクンと手応えがあり,竿を上げると小さい魚がついています。
驚いたことに,この小さな魚はウミタナゴでした。
続けると立て続けにウミタナゴが釣れました。
考えてみると,食欲に訴える待ちの釣りでは釣れないのだけれど,こちらから誘いかける方法だと釣れるようです。
でも,釣れたからよかったとはなりませんでした。
私がしたかったのは,ウミタナゴ釣りではありません。
ウキ釣りがしたかったのです。
3 理想はほどほどに
後年,ヘラブナ釣りをしたことで,ウキ釣りの夢はかなうのですが,これは夢と現実の折り合いをつけることに失敗した初めての経験だったと思うのです。
自分の頭の中でこうしたい,という理想を持ちます。
それと近い形で,実現するとします。
でも,それに満足することはありません。
また,理想を追いかけていきます。
求道家といえなくもないですが,こんなことをしていて理想に追いつくことはないでしょう。ほどほどが大事と思います。
と思っていても,知識として知ってやってみたいことは,まだいくつもあるのですが。
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