「逆境に生きる子たち」をようやく読了しました。
読書に割く時間がなかったのです。
内容はとても興味深かったのですが。
読後,心に残ったことを三つ述べます。
一つ目は,「闘争か逃走か」です。
これは心理学ではよく使われる用語です。
ストレスを感じたときに,どのような対応をするかという話です。
「闘争」は,そのストレス源に立ち向かうことです。
立ち向かった結果,ストレス源を取り除けば解決・安心です。
根本的な対応といえるでしょう。
ストレス源はもうありません。
それに悩まされることはもうないのです。
「逃走」は,ストレス源からに「逃げる」ことです。
これは,ストレス源を取り除けない以上,距離をとって放置するという対策です。
根本的ではありませんが,ストレス源と常時向き合うプレッシャーからは解放されます。
逆境を生きる,そしてそれを乗り越えたレジリエントの中にも「逃走」を選択した人は多くいます。
そもそもストレス源である逆境が取り除けない場合が多いのです。
家族であったり家庭環境で合ったりと,特に子供にとっては生活に組み込まれたものが問題で合ったりするわけです。
そこで心理的に「逃走」するのです。
別の何かに打ち込んだり空想の世界で楽しんだりする。
一見弱い対応に見えるこれらが,多くの力をレジリエントに与えていたとのことでした。
逃げられないストレス源にさらされている大人にとっても参考になると思います。
二つ目は,自制心です。
欲求や感情そのままに生きるのではなく,自分で押さえるということ。
それができる子供がレジリエントになりやすいとのことでした。
当たり前のような気がしますが,そうでもありません。
知能が高い人でも自制心が弱い方がいることはよく知られています。
才能豊かな人でも自制心が弱い方がいます。
レジリエントは,欲求や感情を刺激されやすい環境で育っています。
特に,自分の環境と周囲の,例えば同年齢の子供の環境と自分を比べた時です。
そこには信じられない違いがあることに気づくことでしょう。
強烈なストレスに襲われることと思います。
それに対して自制する。
理性的に生活する。
並大抵ではできないことです。
そこには「逃走」の助けもいることでしょう。
自制していることを周期に気づかせないことも同時に行っています。
すごいことだと思います。
最後の三つ目は,「別の人生を生きる」です。
ペルソナ(仮面)を被って生きる。
別の場所で人生を再スタートする。
進学や就職で家を出た時に行うのですが,今までの自分と別の人生を生きるのです。
この割り切りがすばらしい。
借金を押しつけようとする親とかの場合もあるので,仕方なしにこうなる場合もあるのですが,その決断は大きなものでしょう。
本では,過去が追いすがってくるような事例も紹介しています。
そういうこともあるでしょう。
しかし,それを受け止め対応するくらいの成長をレジリエントはもうしています。
情緒的に揺さぶられると思いますが,それで踏み外すということはないでしょう。
逆境を生きた人には必要なことなのだと思います。
後書きにもありましたが,虐待について書かれた本の多くは,被虐待児をかわいそうという観点で述べることが多いがこの本は違っています。
人間の可能性について述べています。
大人になっても心の傷は完全に癒えることはないようですが,逆境といえる環境が人生のすべてを奪っていくわけではないようです。
私も少し勇気をもらいました。
逆境は,何歳になってもどこに行っても起きる可能性があります。
でも,対処の仕方によって乗り越えることができるのです。