「『老い』に負けない生き方」という本を読みました。
著者はエラン・ランガーさん,ハーバード大学の心理学教授です。
初老となった私には他人事ではありません。
心理学的な知見に基づく「老い」への対抗策があれば,こんなに心強いことはありません。
読後,心に残ったことを述べます。
一つ目は,「マインドフルネス」です。
著者はマインドフルを30数年に渡って研究しているとのことです。
筆者のいうマインドフルとは,日常のささいなことに敏感になることだそうです。
細かな変化に気付くようになることで,自分が常に変化していることに気付くようになる。
おそらく,そうすることで自分で考えることが当たり前になり,自分の行動を自分で決定できるようになることが大切なのだと思います。
二つ目は,「意思決定」です。
老人介護は,健康安全が第一です。
けがや病気は厳禁です。
そのために予防安全に相当の力注がれます。
先回りして安全策を講じるとどうなるか。
老人は自分で考えなくなります。
安全を分かっている誰かの指示を守ればよい。
そういう風になってきます。
それでも安全と健康を守れればOK。
とはならないのが,人間の難しいところです。
意思決定をしなくなると老いが進むらしいのです。
自分で考えなくなった,生き物は生きる力を失う。
そういうことが起きるのです。
困ったことです。
エランさんたちは「カウンタークロックワイズ研究」という大がかりな実験を行いました。
これは,いろいろな要素が入り込んでいるので,詳しくは原著を読んでほしいのですが,意思決定の点から述べると,意思決定があるグループとないグループに分けて比較をしました。
そうすると,意思決定のあるグループが若々しさを保ったようなのです。
何歳になっても,自分のことは自分でする。
そういうことが大切だということを明らかにしたのでした。
三つ目は「言葉の力」です。
心理学的に,ある行動や感情のきっかけとなるものを「プライム」といいます。
そして言葉がこの「プライム」として大きな役割を果たすのです。
ガン患者にとって,寛解と治癒はまったく別の心理的反応をもたらすとのことです。
もちろん,治癒の方がよい反応をもたらし,健康に過ごすことに近づくのだそうです。
つまり,可能性のある言葉を使うことで,活力を引き出すことができるということです。
筆者は,プラシーボ効果も例としてあげていました。
プラシーボで効果があるのであれば,それを使えばよいという考えです。
プラシーボって効かない薬をだまして使わせるというようなイメージがあったのですが,積極的にいい方へ使うこともできたのですね。
目からウロコでした。
この本は,「老い」であきらめていては,よい生活を送れないということだと思います。
しかし,これは「老い」に限ることではないと思いました。
ある種運命的で決定的な状況に陥った時,人は何もかもあきらめてしまいがちになります。
しかし,そのような状況でも,あきらめることばかりではないのです。
その中でも,改善や向上はあるのです。
まずは,マインドフルに生活してみることだと思いました。