この本を見つけた時、新型コロナウイルスの流行中に読む本としてふさわしいかもと思いました。
ペストとスペインかぜについて語る本は多いのですが、コレラについて語る本を少なかったので、おもしろそうだなと思ったんです。
世界史とありますが、実際は19世紀のイギリスでの話です。世界でも歴史でもなく、ピンポイントのお話でした。
それでも、今の日本の状況と重なる部分もあっておもしろかったです。
では、印象に残ったこと2点を述べていきます。
1 コレラのイギリス上陸
コレラは元々、インドの風土病だそうです。
それが世界貿易の進展によりヨーロッパに伝染したんですね。
最初は、ロシアの一都市から始まったようですが、すぐにヨーロッパ全土に広がりました。
イギリスに上陸した際も、いろいろとおもしろい議論があったようです。
これは本当にあのコレラなのか。
私の消毒機器なら、コレラの上陸を防げる。
なんか、横浜港の客船の話とか、コロナはかぜとか、イベルメクチンやアビガンの報道とかを思い出します。
この行き交う情報って産業化してますし、不安をあおって喜んでいるみたいなところがありますよね。
もっと冷静になるべきだなあと思います。
PCR検査をするかしないかみたいな議論をワイドショーで延々していましたね。
未知の病気に対する不安が、あのような状態を加熱させていたのだと思います。
いつの時代も変わらないですね。
2 病気の予防
知識が不確かな時代だから、コロナよりも今から考えると非科学的なことが行われていました。
例えば、消毒のための燻蒸です。
やたら煙でいぶしていたようです。
ロンドンの大火事が起きてしまったようですが、それもそうでしょう。
それから瀉血。
ようするに血抜きです。
昔は、これが病気に効くと思われていたのです。
コレラは脱水が主な症状です。
なので、瀉血は逆効果。
これも、誰が止めるともなく廃れていったそうです。
まあ、効くわけないですからね。
それと、飲み水の清潔さ。
コレラは水から感染します。
このころロンドンは下水道ができたそうなんですが、上水道も下水道もテムズ川。
とてもじゃないが飲めるような水ではなかったそうです。
ロンドン市民も知っていて、飲み水は井戸から汲んでいたとか。
まあ、主飲料がビールだったので、ビール工場ではコレラにかかる人はいなかったという記録もあるそうです。
子どもや女性が犠牲になることが多かったともいいます。
後から、水がよくないということは広まったそうで、煮沸した水を飲むようになったとか。
これらのことを聞くと、コロナを防ぐ時の話も程度の差はあれ、似たようなことがあったと思いました。
手指消毒は意味がないとか、マスクは予防効果が薄いとか、あとワクチン陰謀論とかいろいろありました。
人は信じたいものを信じる生き物なので、こういうことはいつになってもゼロにはならないでしょう。
新型コロナよりもコレラが深刻なことはまちがいありません。
なので、このような致死率の感染症が流行したら、もっとパニックになっていたことでしょう。
対策としての医科学の進展に期待しますけれども、社会心理学的に人間社会のとる傾向も研究を進めてほしいと思いました。
どうも、パニック状態の人間が考えることは、大筋似たような傾向があるようです。
そういうことを知っておけば、さらに冷静に対処できるようになるのではないでしょうか。