岡田尊士さんの「愛着障害」を読んでいます。
発達障害については10年くらい前からよく聞いていました。
それで本もいくつか読んでいて,それなりに知識も増えました。
しかし,愛着障害についてはあまり知りませんでした。
ある発達障害を専門とするお医者さんの講演を聞いてから気になっていたのです。
今回は,愛着障害について話します。
1 愛着障害とは
愛着障害とは,対人関係や情緒の問題を抱えている状態です。
まあよくあるのは,ちょっとのことですごく怒り出したり,愛情をかけてくれる人をもののように扱ったりと,想定外の反応をすることが多いです。
結果,協働的な活動ができなかったり,夫婦・家族関係を構築できなかったりします。
子どもだと,対人関係においてADHDとよく似た反応を示します。
多くの場合,過度に攻撃的になる点が問題になります。
2 他人との関わり方
自分の味方か敵か。
そういう単純なとらえ方をします。
味方であったとしても,何か自分に気に入らないことをすると敵のジャンルに入ります。
そして,敵となればずっと攻撃対象です。
防衛反応が強いためではないかと思いますが,それにしても極端です。
そのため,安定的な人間関係を構築するのが難しい。
そして,ASDとの違いは,人と積極的に関わろうとするところ。
関わろうとするけれども,よい関係は築けない。
なので,よく観察すれば発達障害とは異なる点が多くあります。
3 薬?
ADHDと似ていることからコンサータ等の薬が処方されることがあります。
まったく効かないことはないのですが,ADHDのように永続的に効果を表すことはないようです。
症状がにているだけで原因が異なるのだから当然です。
ただし,これらの障害は複合的に表れる場合が多いので,効果がないといい切れないところが難しいですね。
情動を安定させることが対応の中心になります。
4 原因
原因は早期の幼児期に適切な愛着形成がなされなかったことといわれます。
特に,母親との安定的な愛着形成ができなかったことの影響が大きいとのこと。
岡田さんの本には,偉人とされる過去の有名人の例が多く載っています。
そしてその特異な行動は,幼児期に愛着形成がなされなかったこととつなげて説明されます。
この説明法は,発達障害の説明の初期の著作でも多く行われました。
エジソンはよく取り上げられていましたね。
しかし,その偉人がそういう障害だと判定されたわけでもないので,わかりやすさ以上の意義はないと思います。
現代の実例を挙げてほしいなあ。
閑話休題。
おそらく,愛着障害は現実に存在する障害ですし,その原因も幼児期の愛着形成のなさにあるのでしょう。
多くの症例がそれを示しているように思います。
ただし,これは二次問題を引き起こさないような注意が必要と思いました。
5 冷蔵庫マザー
自閉症の原因は,脳の機能的問題であることが分かっています。
しかし,この原因が分かる前は育て方の問題ではないかと主張されていました。
それが冷蔵庫マザーです。
冷蔵庫のように冷たい母親が,感情表現や対人関係が構築できない子どもの原因である。
そういわれたのです。
これは,障害を抱えた子の母を不幸にしました。
母に責任のすべてを負わせたからです。
そうでなくとも,子の問題は親にせいとされがちです。
脳科学の発展は,これらの偏見をなくしました。
さて,愛着障害です。
真の原因が幼児期の愛着形成にあるとしても,その原因をまた親,特に母親に背負わせることにならないでしょうか。
このことが二次的な問題の発生を懸念させるのです。
6 対人関係の改善
ずっと人と関わらないで過ごせば問題は起きないでしょう。
しかし,自閉症とちがい愛着障害は人と関わりたいので,そうはいきません。
なので,自分の感情の動き方を自覚するとともに,感情をコントロールする方法を身に付けなければならないと思います。
難しいですね。
コーチに当たる人も嫌ってしまえばおしまいですし,自分一人で自分の傾向をつかむのは難しい。
専門に治療に当たれる方を増やしていくことが大切と思います。
愛着障害は,発達障害よりも療育が難しいと思いました。
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