誰かにアドバイスすることは,得意ですか。
私は苦手です。
アドバイスすると,結果に責任を感じてしまうので。
しかしながら,年齢上アドバイスをしなければならない場面に遭遇することが増えました。
今回は,アドバイスで気をつけていることを話します。
1 ギルドール・イングロリオンの言葉
「エルフは軽々しく忠告を与えることはめったにない。忠告は,賢者から賢者に与えても,危険な贈り物だから。すべてがまちがいに走ることもあってね」
指輪物語の上のエルフの言葉です。
初めて読んだときは,もったいぶっているのかと思いました。
しかし,経験を積むと分かります。
よい結果を得させるためのアドバイスと考えると,こういうこともあるのですね。
人を導く難しさを端的に表していると思います。
う~ん。
ここでアドバイスを定義しておいた方がよさそうです。
アドバイスとは何でしょうか。
よりよい判断をするための手助け。
そう考えるのがよいと思いました。
2 アドバイスが生きないのはなぜか
人は,自分の見たいものしか見ない,聞きたいことしか聞かない。
こう言ってしまうと,人間の頑迷さにあきれているように聞こえます。
でも,ここではそういうことを言いたいのではありません。
これは,心理学の研究成果の一つなんです。
人は,自分の枠組みで対象を認知するので,その枠組みにそって物事を解釈をするのです。
枠組みを視点といってもいいし,平たく見方といってもいいでしょう。
見方によって別の絵に見えるだまし絵などが分かりやすい例です。
ウサギに見えたり鳥に見えたり,若い婦人に見えたり年取った婦人に見えたり。
そんな絵を見たことがある方も多いでしょう。
アドバイスを受けた方がいたとします。
「こういう意味だ」
「こうすればいいんだ」
というふうに受け取るのは,あくまでアドバイスを受けた方です。
そこをアドバイスをした人はコントロールできません。
もうアドバイスは,その人から離れてしまったからです。
もしかするとちがった絵を見ているかもしれないのに。
ここに悲劇があるんですね。
そして,アドバイスをした人された人,両者がどちらも善意の人だったとすると悲劇の度合いが深まる気がします。
やれやれ。
コミュニケーションって,やっぱり難しいですね。
3 生きるアドバイスとは
これらのこと踏まえると生きるアドバイスの留意点はこうなるでしょう。
1 自己決定の支援と心得る
○○をしなさい。
○○をしなければいけません。
こういうアドバイスは,誤解を生みがちです。
方向を示し,条件を確かめさせ,自己決定させる。
こういうことを支援するのがアドバイスなのだと思います。
注意深く与えますが,決定するのは相手である。
こういう認識をもってアドバイスすることが大切と思います。
また,自己決定をするとなれば,受けた方もより注意深くなると思います。
2 状況を注意深くとらえさせるものと心得る
自分が陥っている問題は何か。
自分はどのような未来を望んでいるのか。
アドバイスを生かすためには,そういうことをきちんと意識しなければならないでしょう。
問題をきちんと定義する。
自己決定をするのですが,その過程で状況をより詳しくとらえる態度を引き出す。
そういうことを促すのがよいアドバイスだと思います。
3 自己理解を深めさせるものと心得る
自己決定をするには,自分が何をしたいのか,目的は何かを考えなくてはならないでしょう。
状況だけではなく,自分についても知らなくてはいけません。
そういうことを意識させるのが,よいアドバイスだと思います。
でも,普通ここまでいきませんよね。
そういうことを感じ取らせられたらよい。
そんなくらいだと思います。
4 最後に
アドバイスにかかわる問題っていうのは,アドバイスを受ける側が解決しなくちゃいけないんだなあと改めて感じました。
そしてあまり深く考えすぎると,アドバイスできなくなるなあとも思いました。
でも,軽くアドバイスして,相手が失敗する姿も見たくないしなあ。
いずれにせよ,慎重さが必要ですね。
さて,翻って自分がアドバイスを求める際には,あくまで解決するのは自分と思ってアドバイスを聞きたいと思います。
でもまあアドバイスを求める時って,誰がにすがりたくて求めるんですけどね。