フェルメールという画家をご存じでしょうか。
17世紀のオランダの画家です。
写実的で光の陰影が印象的な絵を描きます。
美術に疎い私でもよさがわかる画家です。
宮城県美術館で公開されているので、見てきました。
一言でいえば、とてもよかったです。
1 フェルメールと17世紀オランダ絵画展
このような題名の展示会でした。
このポスターに使われている「窓辺で手紙を読む女」がメインとなります。
フェルメールは、以前にも数点鑑賞したことがあります。
「青衣の女」「手紙を書く女」「手紙を書く女と召使」
どれも宮城県美術館で見た作品です。
フェルメールの作品は全部で30数点しかないらしく、しかも国外の美術館で保存されているものばかりですから、こんな機会でもないと見ることはできません。
しかし、今回公開されるフェルメールの作品は1点だけ。
少ないなあ。
と正直思ったのですが、それでも見たいものは見たい。
いそいそと出かけてきました。
2 宮城県美術館
ここが宮城県美術館です。
もっとわかりやすいいい写真あるだろ。
といわれそうですが、この樹木の感じが好きなんですね。
一時、宮城県知事が老朽化を理由に移転新築を提案したのですが、県民多数の反対で撤回されました。
ここが残ってよかったと思います。
雰囲気もいいし、立地もいい。
東北大学の真横なんですね。
なので、アクセスもいいし何より落ち着いている。
煉瓦風の造りもいい。
お金かかるらしいですけど、ここを修復しながら残してほしいです。
3 混雑した絵画展
ご存じの通り、美術館は撮影禁止です。
なので写真はありません。
ご了承ください。
絵画展は混でいました。
といっても立錐の隙もないというくらいではありません。
みんな、フェルメールが好きなんですね。
ルネッサンスの頃の絵画ってわかりやすいし、素人が見ても「おおっ」となるし私も大好きです。
でも、リアルといっても写真とはちがうのです。
例えば、順光で描いている風景があるとします。
その一部の人物だけ、日陰にいるわけでもないのに逆光の見るように暗くなっていることがあります。
表現の軽重なんですね。
軽く扱っているというよりは、それによって作品の意図を表現している。
そんな感じなんです。
なので、メインで描かれているものは、もちろんよく見るのですが、それ以外の部分もよく見るようにしています。
こういう客がいるから、なかなか人が進まず混み合うのでしょう。
さて、入り口付近で並んでいたら、係員が「順番に見なくともよろしいので、どうぞ中へお進みください」という声掛けをしていました。
そうなのでしょうけど、展示を配置した人には、それなりの意図があるわけで、素人ほどそれを尊重した方が、内容を理解できるはずなので、わかるのですがその指示には従わず、順番に見ていきました。
まあ、途中で戻ったりしたので、さらに混ませたかもしれませんが。
4 レンブラントとフェルメール
まずレンブラントですが、「若きサスキアの肖像」という婦人の絵画でした。
この絵、老婦人に見えるんですね、なぜ題名が「若き」なのか。
と思ったら、これレンブラントの婚約者の絵なんですって。
この後、結婚し10年にわたり幸せな結婚生活を送ったとか。
老婦人に見える上に、この絵、私には幸せには見えないんです。
目がこわいんですよ。
なにか含んでいるような「わかっているでしょう」と語っているような目なんです。
そして、口角は上がっているので、少し笑っている。
不思議な絵です。
習作とのことですが、何をねらって描いたのか。
光の加減と表情の描き込みと、すばらしい絵画であることはまちがいないんですが。
私に鑑賞力がないだけかもしれないですけどね。
さて、フェルメールです。
今回の「窓辺で手紙を読む女」は、修復を終えたばかりの作品です。
背景に画中画が描かれていたのに、上から塗りつぶされていたのだとか。
この塗りつぶしは、X線調査でもうわかっていたのだそうですが、フェルメール自身が塗りつぶしたのだろうと考えられていたのだそうです。
ところが、修復の過程で上に塗られているニスに違いがあることがわかり、フェルメールが塗りつぶしたということはあり得ないという結論にいたったのだそうです。
フェルメールは、以前から人気があったわけではないので、このような詳細がわからなかったのそうです。
それで、修復の過程を説明する動画を見たのですが、たいへんそうでした。
綿棒で少しずつニスを剥がし、解剖刀で少しずつ絵の具を削り取る。
緻密ですね。
まったく大変な作業です。
それで、明らかになった真の姿ですが、画中画として仮面を踏みつけるキューピッドが描かれていたのです。
また、劣化したニスも取り除いたため、明るい色彩が復活しました。
これ、元のというか塗りつぶされた方は右上が寂しかったのですが、今度は、キューピッドの主張が強くなりすぎてるようにも感じます。
でも、明るい色彩もあってか、復活した絵の方がわたしは好きでした。
手紙の内容が愛の真実なんでしょうか。
キューピッドが仮面を踏みつけているのは、欺瞞を否定していることを象徴している、と解説がありましたので。
無理にキューピッドに手紙の中身を結び付けることはないと思いますが、想像が刺激されます。
5 終わりに
さて、17世紀は日本は江戸時代。
狩野派の絵もいいといえばいいのですが、写実的な西洋の絵がいいように感じました。
題材も実在する人物、高貴な方もそうでない方も、を題材にしているのもいいと思います。
なんか、時代の空気感を感じるのですね。
もちろん、その時代に詳しくなんかないのですが。
そんなことを考えながら、すがすがしい気持ちで美術館を後にすることができました。