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【書評】上林陽治編「大学生が伝えたい 非正規公務員の真実」

1 本作の概要

学生のレポート集です。

非正規公務員の現状を立教大学の学生が授業で調べて、それをレポートにまとめたものです。

最近の大学生はしっかりと文章を書けるんだなあ。

と本書の趣旨と別のところで感心しました。

正直、玉石混交感はあるのですが、それでもよく調べて書いています。

非正規公務員の実情が、働いている側の視点のみではありますが、よく分かる内容となっています。

2 非正規公務員

以前は、臨時とかで雇われていたのですが、2020年に地方公務員法が改正されまして、フル勤務で働く方は、会計年度職員という名前になりました。

会計年度というのは、例えば令和◯年度の4月〜3月の1年間のことで、まあ多くの方には、学校の学年の1年だといえば分かると思います。

その間の雇用ということです。

つまり、公募があって面接とかの採用チェックがありまして、1年間働くと、こういうことです。

ここから分かる通り、年金受給の年まで働くことを想定していません。

あくまで1年間、雇用するという制度です。

で、悲劇となるのは、これでずっと働いていこうとする場合ですね。

辞めようと思えば辞められるという人には、そんなに深刻な話ではありません。

とはいえ、日本の現状を考えると、これでずっと働いているという人もいるわけでそこが問題となるのです。

実は、職種によっても変わるのですけれど、公務員の臨時職は連続で3回という上限があったのですが、最近は緩和されつつあります。

要は、ずっと働くには不安定で、ずっと働くことを想定していない制度というわけです。

ですが公務員の現場は、小泉政権三位一体改革以降、非正規を雇うことが前提となって組織が作られています。

まあ、矛盾です。

3 不安定以外の現状

雇用の不安定さ以外には、多くのハラスメントが報告されています。

セクハラ、パワハラですね。

パワハラの多くは、来年は雇用しないことにつながる発言のようですね。

う〜ん。

これは、上司が◯ソなだけで、非正規公務員全員に当てはまるものではないかなあ。

どっちにしろ、公務員だと信用失墜行為の禁止があるので、SNSなりにさらしたらあっという間に立場逆転のような気がしますけどね。

それから、同一労働同一賃金の問題ですね。

同じことしてるのに、賃金が安いという問題。

これは改善してほしいかなあ。

ただ、日本は年功序列賃金が残っているので、同一労働でも年齢や勤続年数によって賃金が異なってくるというのはあります。

完全に同じにすると、それはそれで日本社会がおかしくなってくる要素にはなります。

どうせ低い方に合わせようとするので、全体貧乏になる方向に動くでしょうから。

煎じ詰めると、どうもこれらの問題も、「ずっと働く」ことにつながっているようです。

4 なぜ、非正規が増えているのか

これはですね、みんな分かると思うのですが、人件費抑制なんですね。

公務員は税金泥棒、役所に行くとヒマそうなやつが必ずいる、昼休みにキャッチボールしてやがった。

なんて批判が、昭和・平成の頃は普通にありました。

それと税収不足が相まって、雇用を控えるようになったんですね。

小泉改革がそれを制度的に支えています。

一方、利用者のサービス向上への要求は高い。

安く人を雇って、細かな仕事に対応する。

とこういう方向に動いたわけです。

それでどうなったかというと、社会が不安定でギスギスするようになったと。

こういうわけです。

まあ、正規で雇えば労働問題は解決するでしょうが、そもそも公務員がしている仕事は儲からない分野が多いので、予算をどうするかがつきまといます。

かといってサッチャー新自由主義でもっと民間にすればいいというのは、限界が来ています。

国鉄、郵便局、電電公社、専売公社…。

ずいぶん民営化しましたけど、成功したといえるのはどれでしょうね。

大学や病院も独法化しましたね。

最近は水道も考えられているようですけど、どうでしょう。

サッチャーのイギリスが回復したのは、サッチャー改革じゃなくて北海油田のおかげという分析もありました。

その油田も尽きかけてはいますけど。

5 非正規労働問題の解決策

本書には出てきませんが、非正規公務員の労働問題の根本解決策は一つだけです。

経済成長!

これですね。

個々の問題、ハラスメント等は個々で解決すべきですが、全体としてはそうなんです。

本書は、意図せず正規と非正規の対立を煽るように読めるところもありますが、個々の問題の解決とは別に、問題を生み出す背景を解決するには、日本全体の経済成長が必要です。

雇用の安定の基盤を固めるしかないんです。

そうそう、教員の成り手不足が問題となっていますが、つい10数年前には割り増し退職金を払って辞めてもらうって制度にしていました。

今は雇用延長で、なるべく辞めないでっていってます。

退職金も減らされているようです。

10年くらいで真逆の制度にするくらい、雇用の数は見通せていないんです。

適正な管理云々をいう人はいるけど、未来は分からないし、未来予想した人も責任取りませんから。

6 総評

★★☆☆☆

2つです。

学生レポートの形を借りての発表には違和感が残りました。

つまり、大学の先生はこれは学生の考えだからという逃げ。

学生でも分かるくらい、非正規公務員の労働環境はひどいという現状の強調。

大学の先生の指導力アピール。

こんな出版の意図への違和感です。

労働環境ルポなどは、素人感があった方が読みやすいのは確かなんですけどね。

もし本当にこういう労働現場を変えたいのであれば、制度全体の検証が必要でしょう。

その一端として本書があるというのであれば、意義は分かりますけど。