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【書評】東川篤哉「新謎解きはディナーのあとで2」

1 本作の概要

お嬢様刑事と執事探偵のミステリー、新展開2作目、通算5作目です。

5作目にして、作中のフォーマットが極まったという感じです。

相変わらず失礼執事が鈍感お嬢様を小馬鹿にしながら事件を解決するのは変わらずですが、細かいところまで、様式が決まり始めました。

それを定番と取るか、マンネリとくさすか。

シリーズ累計444万部!という実績を見れば、世間では前者ととらえているのはまちがいなし。

おもしろさはまちがいないところですが。

2 細部の定型化

さて、わたしがつかんだ本作の様式はこうなります。

1 夕食を楽しむお嬢刑事が呼び出されます。

2 自己現場で後輩刑事と捜査をします。

3 ジャガー警部が遅れて現れ、ポンコツ捜査を進めます。

4 お嬢刑事と後輩刑事が周辺捜査を進めます。

5 ジャガー警部がお嬢刑事を呼び出し、ポンコツ推理を披露します。

6 自宅に戻ったお嬢刑事に探偵執事が名推理を披露します。

7 事件解決とエピローグ

まあこんな感じです。

各々の登場人物が自分の役割をしっかり守って、同工異曲な物語を演じます。

ホント「水戸黄門」か「フーテンの寅さん」ぐらい様式化されてますね。

いや「スーパーヒーロータイム」ぐらいかな。

しかし、本作はこの定型化がいいのです。

つまりですね、こういうところは読者が期待しているところじゃないんですね。

前菜が出て、スープが出て、メインが出て、デザートが出る。

その順番に文句いうやつは、コース料理を頼むなってことになりますよね。

本作の読者は、コース料理を食べにきているのです。

そして、そのコースが気に入っているのですよ。

3 メイン料理の味付け

様式化しきった物語のどきに魅力を感じているのか。

それは、メイン料理の味付けですね。

つまり、ミステリーがミステリーたる所以、「謎」です。

解けそうで解けない謎。

これを楽しみにしているのですよ、読者は。

さて本書は5つの短編からなってますが、それぞれに工夫された謎が提示されています。

1話目は「密室」。

2話目は「ダイイング・メッセージ」。

3話目は「アリバイ崩し」。

4話目は「不自然な遺体」。

5話目も「不自然な遺体」。

こうして並べてみると、一つ一つ作者が工夫して「謎」を考えていることがわかります。

そして、その「謎」一つ一つにポンコツな解決策を取り合わせることも忘れずに。

読者が(そりゃないようなあ)とあきれる推理と(なるほど!)と感嘆する推理をセットと提示しなくてはならない。

なかなか難しいと思いますが、作者はきれいにやり遂げています。

この楽しみがあるから、いやこの楽しみを存分に味わうために、様式美が構築されているのでしょう。

4 総評

★★★★

4つですね。

売れているのもわかるよくできたミステリーです。

ただちょっと不安な要素が現れました。

お嬢刑事と執事探偵の恋愛です。

それをにぎわす感じで本書終わったのですが、これは様式美を崩すものです。

どうだろう。

読者は本作を「サザエ時空」に閉じ込めておきたいのではないでしょうか。

様式美のある作品に成長や発展を入れること。

そういうケースがないわけではありません。

しかしそういう場合の結末はこうなります。

作品完結。

読者は、まだまだ読みたいのではないでしょうか。