1 本書の概要
コメディー風の本格推理小説です。
国立署に勤める富豪令嬢刑事と名探偵執事が難事件を解決する物語。
10年以上前に、北川景子主演でドラマ化していたように思います。
なにかの後書きで褒められていたので、古いシリーズは読んでいました。
新シリーズがあったとは知りませんでしたね。
しかも、アニメにまでなっていたとは。
おもしろい小説なので、もちろん当たり前といえば当然なんですが。
新作もおもしろかったです。
2 本作の設定
大衆小説、特に短編小説は当たれば連作となるのが常です。
作家にとっても出版社にとってもドル箱ですから。
フォーマットさえ決まれば、後は量産していく。
それが本筋です。
例えば、「鬼平犯科帳」とかね。
ところが、本格推理小説には、こういうものが多くありません。
なぜか。
解き明かすトリックを考えるのが大変だからですね。
「名探偵コナン」って、その意味ですごい作品ですね。
チームを組んで考えてるのかな。
さて、本作もその連作が難しい本格推理小説です。
事件が起きてお嬢様が概要をとらえる。
上司の風祭警部がトンチンカンな推理を披露する。
帰宅後、執事の影山が「小馬鹿」にしながら推理を披露する。
解決する。
まあこういう展開なんですが、それぞれのキャラクターが持ち味を活かしておもしろおかしく物語を盛り上げます。
なので楽しく読めるのですが、本質は謎解き。
解決できそうでできない謎を提示しないことには物語が成立しません。
読者はもっと読みたいでしょうけど、多作というわけにはいかない。
そういうことで3冊で閉じたと思っていたのですが、見事復活しました。
さて、本作には令嬢刑事に後輩という新たなキャラクターが配置されました。
空気を読まない無邪気に失礼な明るい後輩という楽しいキャラなのですが、風祭警部や影山執事ほど必要不可欠な存在でもなく、ちょっと微妙です。
主人公の推理に条件をつける存在とか、そういうものになってくれたらいい味だすのに。
今はかわいいだけの存在です。
3 本作の「謎」
さて、本作の「謎」ミステリーですが、5作のうちアリバイ崩しが3つ、密室が1つ、変形密室が1つです。
変形密室とはわたしが勝手にいってるのですが、あるべきじゃない場所に死体があったという状況の事件です。
どれも謎の種類としてはよくあるものです。
本作は謎提示が終わるとお嬢様は家でディナーをとるわけで、読者もそのポイントで謎解きを楽しむことができます。
そういう王道的な楽しみ方ができるわけです。
解き明かせないお嬢様を罵倒する執事の言葉は、作者から読者への挑戦でもあるわけでして。
ですが、まあ推理小説というものは総じてそういうものなのですけど、その解決は非現実的といいますかなんといいますか。
そういう可能性もあるということを楽しめばいいのですけれども、リアリティは薄いわけです。
本作はちょっと犯罪クイズみたいなところがありますので、それが強調された感じになります。
個々の謎は本作を読んで楽しんでください。
自分としては、作者よく考えたなあ、えらいなあ、という感想です。
いや、本心から感心しています。
考えるの大変でしょうね。
4 総評
★★★★☆
4つです。
おもしろかったですね。
軽いノリで読み進めて、謎で立ち止まって考える。
そういう推理小説らしい読み方が楽しめる本です。
文体なんですが、コミカルな作品にしては、文体が説明調といいますか、ちょっと理系っぽい感じです。
文学っぽくないんですね。
新聞くさいというか。
それが読みやすさにもつながっていると思いますし、テンポのよさにもつながっている。
そう思いました。
謎を考えるのは大変でしょうけど、今後も続けてほしいと思います。
ちなみに、「新」シリーズは2作目も刊行されています。
この後も続くといいなあ。

