1 ジョン・サイクスというギタリスト
残念です。
安らかにお眠りください。
さて、ジョン・サイクスさんとは何物か?
イギリス人のハードロック・ギタリストです。
この方は、ロック・ギターを弾いている人には有名ですが、一般のロック・ファンにはそれほど有名ではないです。
売れてない。
なんてことはなくて、全世界で1000万枚以上売れたアルバムでギターを弾いています。
それがこれ。
ただですね。
そのアルバムが爆売れした時に、もうそのバンドにいなかった。
そういう経緯があって、有名じゃないんです。
才能はあったのに十分な評価を受けなかった人。
そういう印象があります。
2 ギター・スタイル
本人も明言していますが、ゲイリー・ムーアのフォロワーです。
ゲイリーをテレビで見て、ギターに取り組んだ。
そうインタビューで話してました。
どの辺りがそうかというと、早弾きですね。
3音を繰り返した6連符を多用した弾き方。
これが直接的に似ているところでしょうか。
まあ、それもサーペンス・アルバスの頃には目立たなくなってますけど。
私が思うこの方のギターの特徴は、大きなメロディーと細かい装飾音の組み合わせ。
そして、ゆったりとしたヴィブラート。
そして、深いリバーブ音ではっきりとしないながらも安定感のある演奏。
そんなところです。
そう安定感。
この人はとにかくギターがうまい。
自分で出したい音、弾きたい音をしっかりと出している。
そういう感じが強く伝わってきます。
愛器はレスポール・カスタムです。
こんな感じのギター。
レスポールは音はいいんですが、高音部が弾きにくい。
なのでテクニカルギタリストには好まれません。
ですが、ジョンはそんなことおかまいなしに弾きまくる。
それも自由自在に。
すごい才能だと思いました。
3 テクニック
YouTubeで視聴できるようになって、ジョンの弾き方が分かってきました。
まずはピッキング。
逆アングルというピックを反らせて持っていることは前から知ってましたが、それはこの人の弾き方で重要ではありません。
この人の早弾きはゲイリーとは違います。
右手の薬指、小指をピック・ガードに付けて弾いている。
いわばイングヴェイのスタイルです。
つまり、指屈伸で弾いていたんですね。
安定感と素早さが出るはずです。
ひじから手を振るゲイリーとは大違いでした。
まあ、さすがにイングヴェイよりは動きが大きいですけど。
そして左手。
小指はあんまり使わない。
3本中心にフィンガリングする伝統的ロックスタイル。
ヴィブラートが大きいわけです。
なるほどなあと思いました。
4 作曲者として
この人が作った曲は、80年代のハード・ロックとして名曲が多いです。
サーペンス・アルバスの曲はどれもいいですし、ソロになってから作ったこのアルバムもいい曲がつまってます。
このアルバムの1曲目「ライオット」は、ミドルテンポのゾクゾクする名曲です。
テンポとしては、ミドルからスローの曲にいいのが多いですね。
速い曲は、う~ん悪くはないんだけど、ヨコノリが多いから疾走感がそこまでないというか。
そこは個性だから、私の趣味ではないという感じですかね。
ハード・ロック好きによくあるごりごりに速い曲を聴きたいって人には合わないかもしれません。
曲もそうですが、ギター・ソロもきちんと構築されています。
ソロはアドリブが一番という人もいますが、それはうまくいった時の話であって、退屈なアドリブを聞かされるのは苦痛です。
ジョンのソロは構築されているのでそういうことはありません。
すごくよくできています。
整理されすぎてロックっぽくないといわれるかもしれませんが。
細かいところまで考えられています。
5 全体的に
ここまで褒めてきて最後にいうのも変なんですが、私はジョン・サイクスの熱烈なファンではありませんでした。
うまいし、隙がない。
ポップではないし、湿った感じのヨーロッパ風ギタリスト。
それでいて、イングヴェイ・フォロワーのようなテクニック至上主義ではなく、音楽性も高い。
ある種理想的なギタリストではあるのです。
でも、嫌いじゃないんだけど熱中するほどではない。
そんな感じなんです。
ロック・ギタリストには系譜のようなものがあります。
すごくファンが多いギタリストには、次世代にフォロワーやチルドレンと呼ばれるようなギタリストが出現します。
ヘンドリックスやクラプトン、リッチー・ブラックモアやマイケル・シェンカー。
エドワード・ヴァン・ヘイレンやイングヴェイ・マルムスティーン。
そしてゲイリー・ムーアも。
ジョンにはフォロワーが現れませんでした。
一流なんですが、そういうレベルではなかったということです。
こういう人は時間が経つと「知る人ぞ知る」という感じになるのでしょう。
まあ、それにしてはアルバムが売れすぎていますけれどもね。
さて、ジョン・サイクスがどんなギタリストだったか興味を持った人は、「クライング・イン・ザ・レイン」という曲を聴いてみてください。
サーペンス・アルバスに入っています。
ライブ・バージョンでもいいです。
この曲はジョンが書いたものではありませんが、このギターソロは名演です。
おそらく圧倒されますよ。
それにしても、65歳は若すぎるなあ。
返す返すも残念です。
80年代が歴史になっていく感じがしました。


