ギスカブログ

 読書しながらスモールライフ「ギスカジカ」のブログ

【書評】能登清文「世界一安心な”米国債・ドル建て社債”の教科書」

1 本書の概要

債券投資の解説書です。

能登さんは独立系ファイナンシャルプランナーです。

主に退職金運用の相談にのっているとか。

そこで株式ではなく債券の投資を薦めているというわけです。

本書を知ったきっかけは、YouTubeです。

能登さんは、ほぼ毎日動画をあげています。

内容は債券投資。

まあ、本書の内容です。

それを見て、債券投資を知りたいと思い本書を手にしました。

本当は電子書籍でほしかったのですが、紙でしか販売されいません。

手に取って、理由を察しました。

150ページ弱という薄さ、全ページカラー。

これ絵本です。

紙で出した方が効果的なわけです。

狙っている読者層も、退職者層。

電子書籍に興味がある世代ではないでしょう。

なるほどなという感じです。

2 退職金の債券運用

退職金は、預貯金や株式投資ではない。

債券投資をするべきだ。

これが本書のすべてです。

本が薄いのには理由があります。

訴えたいことがシンプル過ぎるから。

さて、債券運用をどうこう論じる前にですね、前提を整理することが大切です。

退職金の運用なんです。

つまり、かなりの金額を短期間で運用する。

こういう方々を相手にしているわけです。

ターゲットをしぼりこんでいます。

だから、答えも単純なんです。

退職金の運用ですから、資金を大きく育てる必要はありません。

自分の健康寿命の間につかえるお金があればよい。

さらに元手が減るのは不安だから、減らしたくない。

こういう運用なんですね。

となれば、毎年の利子や配当があればいい。

こういう結論なんです。

インデックスの積立運用などが取り上げられないのはこういう理由です。

あれは長期分散運用です。

そして、高配当株の運用を取り上げないのは、株が暴落することがあるから。

つまり元手が減る可能性を排除したいからです。

日本の利率では、ほとんど利子がつかない。

なので、米ドル債券の運用なんですね。

ターゲットの要望を的確に反映した提案。

なるほど、と思います。

3 債券運用の短所

では、債券運用はローリスクでミドルリターンなのか。

という問いが出るのですが、まあ短所はあります。

1つめは、高配当の債券は多くないってことです。

一応社債なら高いのですが、高いものは信用度が低いというのが普通です。

株や債券は倒産したら、紙切れですから。

今は電子取引なので紙ですらありませんね。

現在は、米国の金利がめちゃめちゃ高いので、格付けAランクでもけっこうな利率があります。

でも、今は例外です。

いつもこうじゃありません。

次は、為替リスクがあります。

これ、けっこう大きいですね。

為替は利率なんて比較にならないくらい大きく変わりますから。

ドル円なんてこの1年間で1ドル10円以上変わってます。

対策として、償還したらドルのまま持っていて、ドル高になったら売ればいいというのがあります。

それはそうなんでしょうけど、生活に余裕がないと持ち続けられないと思うのですが。

とまあ、バラ色ハッピーな感じではないんですけどね。

4 総論

★★★☆☆

星3つですね。

じっくり読み返して理解するにはいいんでしょうが、能登さんのYouTubeを見ていればその主張が分かるというのがその理由です。

まあ、ドルでの債券運用についての本は少ないので、本書で基礎的な知識を得る、という使い方はいいと思いますけど。

それでも、買ってよかったと思う点がありました。

債券運用の実際例が載っていた点です。

これ、分かりやすかったです。

この部分を詳しくしたり、もっとケース別の例を載せた本がでないでしょうか。

そのような本が出たら、絶対買います。

おもしろいに決まってますからね。

能登さんのお話だと、ドル債券で大きく失敗はしないという話ですが、それでも失敗例があったらそれも読んでみたいと思いました。

つまりは、「応用偏」が読みたい。

そう思える本でした。

 

 

 

 

【ネタバレ書評】新庄耕「地面師たち」

1 本書の概要

詐欺師たちの犯罪小説です。

本書をどこで知ったかというと、YouTuberの不動産Gメンさんの動画でした。

作者とGメンさんが対談していたのですね。

その話が興味深かったので、手に取ってみたのです。

本書は犯罪者視点の小説ですので、読後の爽快感のようなものはありません。

犯罪の手口と犯罪者の内面がこれでもかと描かれています。

まあ詐欺師ですし、アルセーヌ・ルパンや藤枝梅庵のようにはいかないでしょう。

後味が悪いことを承知で読んでください。

そういうスタイルの作品です。

2 地面師

地面師とは、どういう詐欺師か?

一言でいえば、他人の土地を売ってしまう人たちです。

そんなことできるの?

不動産の売買って、専門家が関わるし、役所に出す書類も作るし、現金じゃなく銀行振込だから口座に証拠残るし。

まあ、そういう疑問が次から次へと出るでしょう。

しかし、実際にあることなんですね。

2017年に積水ハウスが、55億5千万円だましとられてるんですね。

この手の詐欺師に。

なので、実際にあるんです。

おそろしい。

それで、本人確認書類やら登記書類やらを偽造して臨むんです。

本作では、地主のニセ者を用意しています。

干支とかそういう本人確認の基本的情報を暗記させて対面させるわけです。

いやあ、運転免許証とか司法書士の本人確認文書があったらだまされかねないですね。

まあ、買う方にも拙速しなくちゃいけない事情とかがあった場合でしょうけど。

よくよく考えてみると、高度でもなく古典的な詐欺なんですが、それだけに手口が洗練されているともいえるわけです。

振り込まれたお金の洗浄の方が難しそうではありますけど。

3 詐欺師の心理

だまされる方を純真、だます方を狡猾。

本書はそのように描写しています。

特に主人公がグループに入ったばかりの詐欺では、そのように描かれています。

また、主人公自体も詐欺によって家庭が破壊された人間です。

こういうことで、詐欺師の非人間性を強調しています。

最後まで逃げ切ったリーダー格には、もはや人間性がなくなって別の価値観で生きているような感じです。

サイコパスですね。

まあサイコパスは生まれつきなんだそうで、動機がどうこうじゃないそうですけど。

本書は、そういう人間の嫌な部分を多く描写しています。

先にいった爽快感のなさというものは、こういうところに起因しています。

でも、ふと思ったのですよ。

案外、仕事ってそういう面がありますよね。

ものを売る時に、いい品物だから売るっていうのはいいですよ。

でも、欠点とかそういうものは隠して売ることは、けっこう日常的なんじゃないでしょうか。

売る品物が決まっていて、ライバルよりも劣るものを、あるいは高いものを、そうとは告げずに売る。

こういうことって、商売にはつきもののような気がします。

もちろん、犯罪と商売は別物ですけど。

どこかで、程度の問題と捉えている自分がいて、自分も毒されているんじゃないかと心配になりました。

こんな振り返りをしながら、自己チェックしないと倫理観が保てないのかもしれませんね、人間って。

4 総評

★★★☆☆

お薦め度は、星3つかなあ。

こういう世界があるという知識を得るにはいいと思うのです。

ゴルゴ13で国際情勢を学ぶんじゃない!!」

という批判を受けるのと同じレベルかもしれませんが。

ストーリーもよく練られているし、一気に読み終えることができるので退屈感もありません。

それでもやっぱり読後の爽快感がないんですね。

どうしてもリーダー格に共感できませんし。

そういう意味の評価です。

ただ、詐欺師たちが失敗しそうになったとき、彼らを応援する自分が現れて、ちょっとしたストックホルム症候群になりかけました。

そういう没入感はあります。

スリル感が味わいたい人にはお薦めです。

M1グランプリを遠くに感じた

1 M1グランプリの思い出

今日、M1グランプリがありました。

年末という感じがします。

わたしは熱心なお笑いファンではありません。

記憶に残っている最古の視聴は、ノンスタイルとかオードリーの頃だと思います。

そうそう、サンドが出ていた時の決勝は見てました。

以前は、なんとなくチャンネルを合わせて流して見る感じでした。

そんなに期待して見るものじゃなかった気がします。

熱い青春好きの島田紳助さんが、青春ドラマ風に盛り上げている。

そんな印象でした。

それでもネタがおもしろいこともあって、爆笑したこともあります。

ミルクボーイが優勝した時は、笑えるコンビが多かったなあ。

楽しかったですね。

2 今年のM1グランプリ

それで今年のM1グランプリです。

主な感想は2つ。

1つは歌ネタが多いなあ。

もう1つは、ツッコみが怒声っぽい。

これです。

歌ネタは、はやりなんでしょうか。

おもしろければいいんですけど、自分にはピンときませんでした。

4分で歌やると話す時間が減ると思うのですが。

あれだったら、どぶろっくみたいに歌がネタみたいにしてもいいんじゃないかなあ。

練習してきたことは伝わってきましたけど、それが最初に伝わるんじゃお笑いじゃないですし。

2つめの怒声ツッコみは、どつき漫才コンプラ的に厳しいからかなあ。

おいでやすさん当たりからなのかなあ、あれ。

なんかボケとのバランスが悪いんですよね。

大きいボケなら怒声もありなんでしょうけど、それほどでもないボケにツッコみが派手過ぎると釣り合いが取れないというか。

うるさいだけです。

とここまで書いてわかったと思うのですが、M1楽しめませんでした。

決勝エントリーの10組を見て、テレビを消しました。

どの組が優勝してもいいっていうか、もう1回見たいコンビがありませんでした。

3 なぜおもしろく感じなかったか

たぶん、出場された方々は劇場では受けているのでしょう。

最近ネタ番組は少ないようですが、そこでも受けているのかもしれません。

おもしろく感じなかったのは、受け手である自分がはやりのお笑いについていけてないから、なのかもしれません。

最近テレビ見てないので、これは見ないアピールじゃなくて残業が多いからなんですけど、それが影響しているのかもしれません。

加齢とともに、自分が親しんだ文化から抜け出せなくなりますから。

それと自分が負け組だからかなあ、上から目線の小馬鹿にするような笑いって受け付けなくなりました。

敗者復活組は自虐ネタだったんですけど、自虐が自虐になってなくてなんか嫌な悪口みたいに感じてました。

こういうところも関係しているのかなあ。

それから、錦鯉みたいな小学生でもわかるネタがなかったのも原因かなあ。

なんか、狭い層をねらった笑いのようで。

その狭い層が笑いのエリートみたいなのは、若手の頃のダウンタウンのスタイルでしたけど、あれはそういう「売り方」で希少価値を高めてただけだと思うのです。

分かっている笑いのエリート層なんて、存在するわけないのにね。

今年のコンビがそういう層をねらっていたとしても、たぶん、そういう層に入りたいとは微塵も思わないでしょう。

売れたいですからね。

 

4 加齢への不安

とはいえですよ。

こういう番組で素直に笑える人は、楽しい人生を送っていると思うのです。

そして、そういう人にわたしはなりたい。

だから、今年はある意味自分にがっかりしています。

これも加齢のせいでしょうか。

不安です。

 

【書評】太田垣章子「あなたが独りで倒れて困ること30」

1 本書の概要

終末をどう迎えるか。

このことを司法書士の先生が解説した本です。

独居老人の場合に焦点を当てています。

この本いいですよ。

独り者じゃなくとも、終末を迎えるために備えることが列挙されています。

併せて、終末に関する制度などに詳しくなります。

独り者じゃなくとも必読ですね。

人生の終わりは誰にでも来るのですが、考えたくないという感情が先立ちます。

しかし、先送りしてよいものでは、決してありません。

みんな考えるべきこと。

そのこと改めて、やさしく指摘していただきました。

2 断捨離を進める

知っているけど認めたくないこと。

老化。

体もそうですが、一番の問題は頭、思考力です。

考えが鈍くなる。

駿馬も老いては駄馬に劣る。

どんなに聡明な人も判断力は弱まるのです。

だから、50代には考えないといけない。

そういうことなんです。

老化すると集中力と記憶力が低下します。

だから、取り扱う事柄は少ないほどいい。

そういう意味で、断捨離が有効なんですね。

わたしはこのブログを始めてから、いろいろなものを捨ててきました。

書籍は数100のレベルでなくしましたし、カセットテープは0になりました。

衣服もどんどん減らしています。

新しいものを買うことはほぼないです。

それでもまだ、ものは多くあります。

人間ものを持ちすぎなんですね、きっと。

それから使わない銀行口座は減らしました。

中学生の頃から持っていたのもなくしましたし。

ただ、証券口座を開設したりクレジットカードを作ったりしたので、結果お金に関するものは増えています。

もう少し減らそうと思います。

使っていないものは、ないんですけどね。

3 倒れた後のことを決めておく

エンディングノートというものがあるそうですね。

終末を迎えるに当たり、必要なことを記録しておくのに使うのだとか。

大事なことだと思います。

ただ、法的効果はないとのこと。

つまり、遺言の替わりにはならないということです。

もし遺産が残りそうなら、公証役場で遺言状を作成する。

筆者はこのことを強調しています。

さすが司法書士、といったところですが、それはそうだと思います。

第一、遺言状は死後もめないために残すのに、書式がどうだ法的効果がどうだでもめるようなものを残しても仕方がありません。

そういうものは法律に則ったものにすることが大切です。

後、気になるのは支払い関係、特にサブスク系ですね。

まあ、電気・ガス・水道・新聞・NHK・電話だってそうなんでしょうけど、自動で支払っているものです。

家賃も入りますね。

これ、最近クレジットカードで支払っているものが多くです。

しかも、ネット契約だと本人のIDとかパスワードとかがないと開けなかったりします。

そして、サブスクのすべてを家族に話しているわけでもないと。

倒れた後にもめるのが目に見えますね。

全部書き出して置くのがいいでしょうね。

ただ、パスワードって数ヶ月で変えたりするから、その都度になるので、面倒くさいことは確かです。

必要ないものは契約しないことが一番。

シンプル・イズ・ベスト。

そういうことです。

それから、頼む人を決めておくことも大事です。

入院には保証人が必要です。

それから、意識がなくなってからの延命についても話しておく必要があります。

植物状態でも一端治療を始めたらやめられません。

罪に問われますから。

しかし、そんな入院患者の世話を継続することは難しいのだとか。

最後は、いつまで続くのか、という嘆きが出るそうです。

それはそうでしょう。

回復するならともかく。

こういう判断というか、世間の評判まで残った人に負わせることはできません。

自分で決めておくことです。

4 総評

いくつもの現場に関わった筆者に話には説得力があります。

すべての人が迎える人生の終末。

しっかりと決めておきたいものです。

後は野となれ山となれ。

では困るし、困らせるんです。

ホント、しみじみ思いました。

 

 

【書評】吉岡大祐「ヒマラヤに学校をつくる」

1 本書の概要

外国の支援体験記です。

発展途上国支援といえば、NPOとか青年海外協力隊とかJICAとかそういうのが想起されます。

本書を読む限り、そういうものではないらしいです。

海外生活に憧れる青年が知人の紹介でネパールに渡り、小学校をつくるという話です。

しかも、青年は鍼灸師です。

珍しい人生といえますね。

中村哲さんのインタビューを読んだことから、途上国支援に興味を持って読んだのですが、なかなか考えさせられる内容でした。

2 ネパールの現実

まず青年吉岡さんが語るネパールというのが、なかなか強烈です。

一言で表せば、貧乏。

そして差別。

鍼灸師として活動を始めるのですが、病院に行けない人たちが口コミで集まってきます。

その中で他の人から差別されている人たちがいました。

ダリット。

カーストで最底辺のクラスの人たちです。

人から優しくされた経験がないことが語られます。

ネパールは、インドと同じようなカーストがあるのです。

そして、歓迎されない女性。

女の子を産んだというだけで、家から出される女性。

そういう事例が語られます。

なぜこういうことが起きるかというと貧乏だからなんですね。

女性は嫁ぐ時に、ダウリー(持参金)を持たなければなりません。

これが結構な額らしいのです。

なので、女の子ばかり育てるとその家が貧乏になってしまう。

十分なダウリーを持ってなこないと家から出されてしまう。

こういうことが起きるのだとか。

ちょっと読むのがつらくなるくらいでした。

3 学校をつくる

この現実に対するアクションが学校をつくることでした。

鍼灸師としての活動では救えない子供たちがいたとのことです。

すばらしい。

自分の名前を書くことで感動を覚える子供。

日本では目にすることができなくなった現実です。

日本だと教員免許やらなんやらで資格のある人集めないとみたいな話になるのですが、そこは大丈夫だったようです。

それでも学校は簡単にはできません。

多くの方々の援助をいただきながらの開設です。

それでも子供たちが集まってくる。

希望なんでしょうね。

学校に行くと労働力が足りなくなる家族から不評だったりと、明治の頃の日本みたいな話も出てきます。

それでも子供たちの教育に邁進する吉岡さんたちはすばらしい。

子供たちが変わっていく様子が描写されていました。

4 総評

現地の最下層の子供たちに支援をする姿はすばらしい。

日本の海外支援って、インフラ支援とか大きいのもいろいろあるでしょうが、こういう支援が現地の役にたつのではないでしょうか。

読後、ネパール政府自身の問題も大きいとは思いましたが、王政から共和制になったばかりで安定していないようです。

また、ネパール大地震の影響もまだあるようです。

そんな中での学校の運営。

考えるだけでもたいへんですが、順調に卒業生を輩出しているようで安心しました。

途上国支援の現実、一端かもしれませんが、を知ることができただけでも、本書を読んでよかったと思いました。

www.ikueikai.info

【書評】「『経済成長』の起源」

1 本書の概要

どうやって世界が経済成長をしてきたのかを探った本です。

専門書でかつ分厚かったので読み応えがありました。

経済はどういう条件がそろったときに発展するのか。

そういうことを歴史的に考察した本です。

日常から離れた学問的な内容でしたが、現代の停滞する日本を考えるヒントになりました。

常識を問われ直される内容でおもしろかったです。

2 植民地からの収奪だけでは説明がつかない

ヨーロッパの諸国が経済成長をしたのは、多くの植民地を持ち、その植民地から収奪したからだ。

こういう仮説について、本書は明確に反論します。

スペインやポルトガルは新大陸から多くの資源を収奪した。

しかし、富は一時的な反映をもたらしただけで、永続的な経済成長はできなかった。

確かにその通りです。

スペインは覇権は、続きませんでした。

無敵艦隊が敗北した。

ハプスブルク家が零落した。

まあ、いろいろ原因いえるでしょう。

しかし、富は持っていたのです。

その富を増やすことはできませんでした。

3 勤労貯蓄意識が重要!?

マックス・ウェーバーの説ですね。

カルバン派が勤労と蓄財に励む人々を生み出した。

こういう人々が経済成長を後押しした。

こういう話ですね。

スペインはごりごりのカトリック派。

全世界に修道士を派遣し不況に勤めました。

何せ日本にまで来てますからね。

とはいえ、プロテスタントで最も速く貿易立国となったオランダの繁栄が続かなかったことから、これも決定的とはいえず。

他の要素を探ることになります。

4 法の支配

民主的な公平な制度が繁栄を約束した。

とこういう説です。

中世において先進地域だったイスラムや中国で経済成長が続かなかったのは、宗教的な制度にとらわれたり、法律を超越する専制君主がいたからだ。

イギリスは、国王さえも議会が退位させている。

とこういう理屈です。

これはかなり説得力があります。

いや、ありました。

最近の中国の経済発展を見るまでは。

独裁専制でも経済発展するんですね。

ただ、今後も中国が発展を続ければという話ではありますが。

とはいえ、専制君主(に類した)制度のもとで経済発展した国が少ないことも事実です。

5 産業革命

産業革命こそが大切なのだ。

つまり生産の効率化ですね。

重要なことはまちがいないでしょう。

経済発展している国は、工業国が多いですから。

しかし、産業の工業化は、最初は大変でしょうけれども、後から模倣できます。

そして、世界の国で工業化できない国はもはや存在しない。

にも関わらず、経済発展しない国もある。

こういう疑問は残ります。

蒸気機関をいつまでの秘密にしておけるわけもない。

こういうことです。

まあ、工業化に耐えうる人材を育成することも重要。

ということで初等中等教育が普及していないといけない。

こういうことはあると思います。

中国や日本は17世紀ごろから識字率は高かったようですけれども。

産業革命時のイギリスがそれほど高かったのか。

少年労働の問題もあっただろう。

そういう反論もあるでしょう。

6 総評

つまりは、単一の原因で経済発展が起きるわけではない。

様々な要素がからんでおきる。

こうはいえると思います。

翻って、日本はどうなんでしょう。

30年間成長していないとのこと。

まあ、戦後の経済成長は、冷戦下のアメリカの大盤振る舞いのような気はします。

日本製品どんどん買ってくれましたから。

それも限界ということで為替をいじり、それで一時的に富が増えたものの、経済成長の要因は失った。

とこんなところでしょうか。

日本自体も人口減に突き進んで、国内市場も失わせているようですけどね。

本書に書いてありますが、現代の日本でも年収300万ぐらいの人でも産業革命下の富豪よりも快適な暮らしをしています。

なので、世界は徐々に豊かになっていっている。

そう説明されています。

それを読むと安心します。

まあ総論はそうでも、自分という各論が豊かであるかどうかはまた別の話になるのでしょうけれどね。

中村哲さんの生き方

1 インタビュー集

最近、中村哲さんのインタビュー集を2冊読みました。

 

中村哲さんのことは薄い知識で知っていました。

アフガニスタンに医師として派遣されていたこと。

医療よりも水路を造る方が大切と現地に用水路を造ったこと。

銃撃により亡くなられたこと。

現地の尊敬されていること。

そんなくらいです。

お亡くなりになった頃のニュース報道等で知った薄い知識です。

改めてどういう方なのか知りたいと思って手に取ってみたのです。

2 ハンセン氏病

中村さんが派遣されたのは、ハンセン氏病対策のためでした。

知らなかったなあ。

しかも最初はパキスタンに派遣されたのです。

しかし、パキスタンハンセン氏病と思っていっても現地の現実は違います。

予算をつける側と予算を要求する側の違いってどこでもあると思うのですが、ここまで違うのもすごいと思います。

まず、現地住民にとって国境とはそれほどの意味ではない。

現地のパシュトューン人はアフガニスタンパキスタンにまたがって暮らしています。

親戚が隣の国にいるのも普通。

だから中村さんがアフガニスタンに入っていったのも当然なんですね。

そしてハンセン氏病

日本では、難病で苦しんでいる方がいる伝染病という印象です。

しかし現地では、難病は難病ですが命はとられにくい病気。

赤痢とかそっちの伝染病の方がこわいという面がある。

なるほどなあと思います。

そして現地でほしいものは、現地に行かないと分からない。

足のけがを防ぐスリッパのような履き物を配ったところ信頼度が上がったというもの興味深かったです。

3 水路

なぜ中村さんが水路を造り始めたのか。

それは、現地の健康状態を改善するには水路が一番だったからです。

気候変動なのか、現地は水不足。

水さえあれば耕地がよみがえり、働き手は戻ってくる。

水くみという重労働からも解放され、衛生環境がよくなる。

いいことづくめ。

こういうことなんだそうです。

そこを行動に移すところが中村さんのすごいところですね。

しかも、水路の土木技術は故郷九州の川から学んだもの。

江戸時代の治水の技術らしいです。

それが、現地の持続可能な技術。

この辺りも判断もすごいですね。

そういうことを数十年単位で行っている。

尊敬しかありません。

海外の協力隊というと自己犠牲や奉仕の体現みたいなイメージがあります。

中村さんはインタビューだからもらしているのもあるのでしょうが、日本で適応できなかった若者が来る場合も多いといいます。

それは、日本に居ても肌感覚で分かる感じがします。

それでも、現地に溶け込んで一緒に土木をやれば変わってくるといいます。

海外協力の現実的な一面なのでしょう。

わたしはこういうところを読んで、かえって海外で協力している方を尊敬できるようになりました。

そういう人間くさいところって大事だと思うのです。

4 タリバン

中村さんが亡くなって、アメリカが撤退して、アフガニスタンはまたタリバンが治めているようです。

タリバン原理主義的テロ集団であるというイメージがありますが、中村さんよると現地ではそうでもないとのこと。

アメリカ的な価値観では自由を圧迫する存在ですが、タリバンが治めていると治安はよくなるのだとか。

つまりルールが厳しくなるからですね。

もちろん嫌なこともあるのでしょうが、それで安心できる部分もあったりする。

そういう感じなのだそうです。

9.11とタリバンのイメージが合わないと中村さんはいいます。

飛行機を操縦したりパソコンを操ったりはタリバンではない。

アラブの金持ちにしかそういうことはできないというのです。

現地の感覚でしょうね。

真実は不明ですが、アラブ人を客人としてかくまっていたという可能性もありそうです。

5 総評

自分の人生はこういったボランティア活動とは無関係でした。

後悔というほどではありませんが、それにしてもと思うところはあります。

そして、中村さんのような人が存在したことが奇跡のような感じがします。

現地の公園には彼の写真が掲示されているとのこと。

偶像崇拝を禁じるイスラム国家では考えられないことです。

著書ではなくインタビュー集を読んだことで、人間としての中村さんを知ることができたような気がします。

米軍が撤退したことで、アフガニスタンのニュースを聞くことは少なくなりました。

しかし、中村さんのことと忘れてはならないと思います。